いまさら「復活」ですか ~昔むかしに計画されたゾンビ石炭火力までも


ここ数年の石炭火力発電所の建設〝ブーム”に乗って、長い間休眠していたはずのいくつかの発電所建設計画までもが動き出しています。東北電力・能代3号機、中国電力・三隅2号機、九州電力・松浦2号機などです。

これらの発電所は、いずれも各電力会社が1980年代後半以降に複数の発電機を持つ発電所として計画されました。実際には、一部の号機だけが建設され運転を開始していました。毎年各電力会社が3月に公表する「供給計画の概要」(中国電力は「経営計画の概要」)には、運転開始は10年程度先の年次で「計画中」などの形で記載され、実行にはすぐには至らないような書きぶりで何年も、いわば休眠状態で推移してきました。(かつては原発の計画にも似たようなものがありましたね。)

様変わりが起こり始めたのは2014年3月の「供給計画の概要」です。石炭火力への風向きが変わり、各所で石炭火力発電所の計画が出され、火力電源の入札制度が導入されていった中で、東北電力、中国電力、九州電力も、これらの古い計画の復活を再検討し始めたのです。各電力会社とも、この入札の手法を使い、他社から応募せず、いずれも“自社落札”という自作自演のような方法で…。(どんなからくりがあるのでしょう?)。

問題は、これらのまるでゾンビのような発電所の建設計画までもが復活しているということだけではありません。新規計画ではない、ということで「環境アセスメント」がこれから行われないということにあります。なぜかというと、各発電所の1号機の建設開始は、現行の環境影響評価法が1997年に施行するよりはるか前に先行しており、能代3号機と松浦2号機については法が存在する前の「省議アセス」あるいは「閣議アセス」と呼ばれた時代に認可がされているからです。最近、環境省の会議などで明らかにされてきている情報からは、東北電力の能代発電所は、一括で1981年に1)、九州電力の松浦発電所2号機については2000年3月に2)許可がなされているようですが、まるで古文書を見ているようで、環境に関する情報がわからないままです。

東北電力・能代3号機については、2015年10月に「自主アセス」を行うということで、資料を公表し、秋田県で説明会を開いたようです。また、2016年1月13日には工事の計画を公表し、2020年6月に運転開始することが発表されました。九州電力の松浦2号機については、情報が公開されていません。今さら15年以上も前の技術を使うなんてことはまさかないにしても、いずれも60万~100万kWの大規模火力。当然のこととして、再アセスが必要ではないでしょうか?なお、中国電力の三隅2号機については、経済産業省の資料では今後、アセスを行う予定となっていますが、詳しいことはまだわかっていません。

ゾンビ

【注釈】

1)東北電力 能代発電所
2015/5/19
環境省 中央環境審議会 総合政策部会 環境影響評価制度小委員会(第2回)
資料3-2 各社の電力卸供給入札の実施状況/平成27年度電力卸供給入札の実施状況(PDF)
2015/12/25
新設発電所の環境保全対策について、住民説明会を開催しました(東北電力Web)
2016/1/12
能代火力発電所3号機新設工事の着工について(東北電力プレスリリース)

2)九州電力 松浦発電所
2008/10/3 環境省 第3回環境影響評価制度総合研究会
資料3  経済産業省の環境影響評価に係る取組(PDF)