袖ヶ浦・市原の石炭火力発電について住民の意見交換会


少し前のことになりますが、2016年10月25日、新規石炭火力発電所建設計画が進行する千葉県袖ヶ浦市と市原市の両地域の地元住民の方々、また千葉県内の市民団体の方々が集い、石炭火力の是非やエネルギーの今後について意見交換会を実施しました。
今回の意見交換会は7月に続き2回目で、前回、石炭火力についてもっと様々な情報を詳しく知りたいという要望があり、この2回目につながりました。特に関心が高かったのは、原発に反対した上で石炭火力にも反対した場合、エネルギー供給は大丈夫なのかということでした。

2020年には今の3倍近くの石炭火力発電が稼動??

意見交換では、気候ネットワークの平田氏より、既存の石炭火力発電所の老朽化を勘案しても、現在の48基の新規石炭火力建設計画は、過大であることが説明されました。2020年ごろまでに耐用年数を超える老朽設備が設備容量にして350万kW程度しかない一方で、2020年に稼動予定の計画中の石炭火力発電の容量は1000万kWに上るためです。袖ケ浦住民意見交換会
さらに、今後、省エネの取組が進むことを考えると、政府の電力需要予測が過大である可能性が高く、このまま石炭火力建設が進めば供給過多となる可能性があります。よって石炭火力は新設せず、既存設備を耐用年数まで使用する中で再エネ割合を増やしていくことで、脱原発・脱炭素を実現することができるという説明でした。

次いでFoE Japanの吉田氏からは、石炭推進は原発推進にもつながることが指摘されました。電力業界は排出削減の自主目標を持っており、石炭火力を増加させる傍らでこの目標を達成するためには、排出を相殺するための大規模な「非化石電源※」、つまり原発が使われてしまう可能性が高いというのです(詳細はhttp://e-shift.org/?p=3322)。また、袖ヶ浦石炭火力発電所建設計画を進める東京ガスと面会し、建設計画の中止と再エネの推進を伝えたことも報告されました。

※化石燃料以外により得られるエネルギー源で発電した電源

石炭火力発電の新設は、首都圏住民の健康問題。

東京公害患者の会・秋本氏によると、東京都のぜんそく患者は増えており、PM2.5の排出規制も不十分で、このまま石炭火力を推進することは首都圏の住民の健康にも関わる問題であることが指摘された。こうした被害予測に対し、十分な対策コストを支払っていないことを考えると、石炭のコストが安いことには疑問に思えます。
会場の参加者からも様々な意見が上がりました。袖ヶ浦市民で石炭火力建設中止へ向けて精力的に活動されている川上氏からは、事業者が環境アセスメントの手続きを進める中で、住民への説明が不十分な状況が伝えられました。また隣接する市原市でも計画があり、2つの設備による複合汚染の可能性にも懸念が示されました。

今回の意見交換会を終えて、社会全体としての将来的なエネルギービジョンがないままに電力小売全面自由化が始まり、事業者が目の前の「安さ」重視で石炭火力計画を進めている現状が浮かび上がってきました。一方で、自由化の中で再エネ推進を進める流れが少しずつ生まれています。石炭火力推進という時代錯誤の流れを止めていくには、計画段階の今から行動する必要があります。

意見交換も2回目となり、こうした石炭火力新設の危険性について参加者である地元住民の方々の理解も進行してきました。一方、原発と石炭の両方を否定する運動が受け入れられるのか、やはり再エネが普及するまでのつなぎの電源を必要とするのではないか、という意見もなおありました。今後、より幅広い地元住民の参加を得つつ、さらに意見交換を継続していくことを確認して、意見交換会は終了しました。

(国際環境NGO FoE Japanインターン 井関 将人)