【最新報告書】2019年、建設計画進行中の石炭火力発電所の設備容量は4年連続で減少したが、パリ協定の目標達成には一層大幅な削減が必要


2019年、建設計画進行中の石炭火力発電所の設備容量は4年連続で減少したが、
パリ協定の目標達成には一層大幅な削減が必要

米国トランプ政権下における石炭火力発電所の閉鎖は、オバマ政権下との比較で67%増

[ワシントンD.C.]- グローバルエナジーモニター、グリーンピース・インターナショナル、シエラクラブ、およびエネルギー・クリーンエアー研究センターが本日発表した最新の報告書『活況と不況2020:世界の石炭火力発電所の計画の追跡 (原題:Boom and Bust 2020: Tracking The Global Coal Plant Pipeline)』によると、2019年には、世界各地で建設計画が進められている石炭火力発電の設備容量は4年連続で大幅に減少していたことが判明した。

本報告書は、石炭火力発電所の計画状況のまとめとしては5回目の年次調査となる。本調査の結果、建設計画進行中(発表および建設中)段階にある石炭火力発電所の設備容量は前年比で16%減少、2015年からは66%減少したことが明らかになっている。また、着工は2018年に比べて5%減少し、2015年比では66%減少した。

進行中の建設計画は減少しているものの、世界全体の石炭火力の発電設備容量は2019年に34.1ギガワット(GW)増加し、2015年以来初の増加となった。新たに運転を開始した石炭火力発電所の設備容量は68.3GWで、その3分の2近く(43.8GW)を中国が占めている。中国以外のすべての国の閉鎖設備容量(27.2GW)は運転開始容量(24.5GW)を上回ったため、世界の石炭火力発電所の設備容量は2年連続で減少した。*

筆頭著者であり、グローバルエナジーモニター石炭プログラムのディレクターである クリスティーン・シアラー(Christine Shearer)は、「再生可能エネルギーが増加し、電力需要が減少したことで、世界の石炭による発電量は2019年に記録的な減少を見せました。それにも関わらず、多数の新規石炭火力発電所が送電網に接続されています。その結果、世界各地で石炭火力発電所の稼働率は大きく低下しており、さらに多くの発電所の発電量は減少することになるでしょう。このような実態は、新規の石炭火力発電所への資金提供を続ける銀行や投資家にとって収益性の低下とリスクの増加を意味しています。」と述べている。

世界的には石炭火力発電所の新設計画は減っているものの、中国における警戒すべき傾向は続いている。石炭火力発電所の稼働率がさらに低下する中、2019年に送電網に接続された新規の石炭火力発電の設備容量は増加しており、過剰設備の問題を悪化させている。建設許可への規制が緩和されたことで、以前延期となっていた石炭火力発電所建設計画が再開されたことも過剰設備の原因となっている。

エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)のリードアナリストであるラウリ・ミルヴィエルタ(Lauri Myllyvirta)は、次のように述べている。「中国における石炭火力推進のロビー活動は、2030年までに多数の石炭火力発電所の新設を後押しするもので、気候変動との戦いに貢献するという同国の公約と完全に矛盾しています。政策当局者がコロナ危機後の経済活性化の道を模索する中、 石炭火力発電所を相次いで新設することは、最悪の無駄な浪費となるでしょう。中国の気候変動に関する公約、およびクリーン・エネルギー技術における競争力の高まりが共に意味するのは、クリーン・エネルギーの導入が加速し、石炭火力発電に成長の余地はないということです。」

経済協力開発機構(OECD)諸国内では、石炭火力発電の設備容量は2011年以降減少し続けている。2019年に閉鎖された石炭火力発電の設備容量のほぼ半分を米国が占め、同国では過去2番目の規模となった。欧州(EU)においては、閉鎖は過去4番目の規模となっている。トランプ政権下における米国の石炭火力発電所の閉鎖はオバマ政権下に比べて67%増加し、年平均閉鎖設備容量はオバマ政権下(2009〜2016年)で8.2GW、トランプ政権下(2017〜2019年)では13.7GWとなった(下図参照)。


シエラクラブの環境正義の国際代表であるネハ・マシュー=シャー(Neha Mathew-Shah)は、「トランプ政権下における石炭火力発電所の閉鎖は、ここ3年にわたって続いているだけでなく、その数は増加しています。石炭は、これに替わるエネルギーとして台頭してきたより安価で汚染の少ない近代的エネルギーに経済的に対抗することができません。米国はその状況を見極め、クリーン・エネルギーへの移行を受け入れる時期に来ています。」と述べている。

米国とEUが石炭から手を引く中、日本はOECDにおける最大の新規石炭火力発電所計画の支援国となっている。日本国内で建設計画が進められている石炭火力発電の設備容量は11.9GWに及び、それは既存の石炭火力発電設備によるライフサイクルCO2排出量(耐用年数を迎えるまでに排出される二酸化炭素の量)を50%増加(39億トンから58億トン)させることになる。日本国外では、オーストラリアの石炭火力発電の設備容量(24.4GW)を上回る24.7GWの石炭火力発電設備に、日本の公的融資が関わっている。

グリーンピース・インターナショナルのグローバルストラテジストであるジョルジュ・ダロス(Gyorgy Dallos)は、次のように述べている。「アジア諸国の中にはいまだに石炭火力を推進している国もありますが、世界のその他の地域の石炭火力は全面的に減少しています。脱石炭の国際的な傾向がこの先も継続することは明らかです。残念ながら、中国と日本による国際的傾向からの乖離はますます強まっており、石炭火力発電所の新設およびアジアにおける石炭火力発電開発への投融資継続の元凶となっています。」

2019年における石炭火力の新増設計画・建設は減少したものの、パリ協定の目標を満たすには世界全体で一層大幅な石炭火力発電の削減が必要とされている。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、地球温暖化を 1.5°C未満にとどめるためには、2030年までに石炭火力発電を80%削減する必要があり、国連は 2020年以降の石炭火力発電所の新設をやめるよう世界各国に要請している。

グローバルエナジーモニターの金融リサーチ・アナリストであるグレイグ・エイトケン(Greig Aitken)は、「世界の石炭火力発電所の設備容量はすでに、パリ協定の目標を達成できる範囲をはるかに超えています。資金提供者らは現実と一致する対策をとる時期に来ています。」と話す。

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* 建設中とは、実際に石炭火力発電所の建設工事が進められていることを指す。一方、発表段階とは、石炭火力発電所が計画段階にあり、建設工事はまだ開始されていないことを指す。着工とは、過去1年間に建設工事が始まったことを指す。

注:平均的な石炭火力発電ユニットの設備容量は350メガワット(MW)であり、多くの石炭火力発電所は2つ以上の発電整備(ユニット)で構成されている。

報告書(和文)

報告書『活況と不況2020:世界の石炭火力発電所の計画の追跡 (原題:Boom and Bust 2020: Tracking The Global Coal Plant Pipeline)』(和文PDF)

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エネルギー・クリーンエアー研究センター(Centre for Research on Energy and Clean Air : CREA)は、大気汚染をめぐる最近の動向、原因、健康影響、および解決策の明確化に重点的に取り組む独立研究機関である。詳細は、www.energyandcleanair.orgを参照。

本件に関するお問い合わせ先

Christine Shearer(Global Energy Monitor/Los Angeles, California)E-mail: shearerchristine@gmail.com
Ted Nace(Global Energy Monitor/San Francisco, California)E-mail: ted@tednace.com
Lauri Myllyvirta(Centre for Research on Energy and Clean Air/Helsinki, Finland)
E-mail: lauri@energyandcleanair.org
Greenpeace International Press Desk  E-mail: pressdesk.int@greenpeace.org
Cindy Carr(Sierra Club,/Washington DC)E-mail: cindy.carr@sierraclub.org