現在、広島県にあるJ-POWERの竹原火力発電所新1号機(石炭、60万kW)の環境影響評価の手続きが異例の早さで進められています。私たち(広島県芸南地区火電阻止連絡協議会)が危惧していることは、リプレイスだから、大幅な環境改善が見込めるのだろうという楽観論の中で、議論を尽くさないまま審議を終えることです。
石炭火力発電所は二酸化炭素を大量に排出することはいうまでもないことですが、低品位炭(炭化度が低い亜瀝青炭等を指すが、高灰分炭、高硫黄炭も含める)の利用拡大に伴う環境汚染(水銀を始めとする重金属の排出やPM2.5による環境汚染など)が懸念されています。これらの問題に加えて、地域特有の問題があります。
竹原火電の立地の特徴は、民家から非常に近いことです。1960年代、1号機建設時、埋立による工事費を抑制するため、発電所の南側護岸線を旧海岸線から近い現在の位置まで下げたことが、事の始まり。そのため、50年後の現在まで民有地を食い続けながら、敷地増殖を続けています。
2号機(1974年運開)は1号機の石炭灰処分場に、さらに残る石炭灰処分場と、日本の典型地形である東川のカプス状三角州にあった民家、畑を買収した土地に、3号機を増設します。 新1号機計画では、新たに取得した工場跡地に貯炭場を建設するため、発電所西隣の民家が発電所敷地と新設貯炭場に挟まれる配置図が示されました。けれども、何も具体的な計画が示されなかったため、電発の関連会社である(株)開発肥料竹原工場からの低周波振動の被害に悩まされた住民は不安をかきたてられ、方法書に対して多くの意見を提出します。
挟まれた場所の用地交渉が始まったのは、環境調査が始まった2011年秋です。新設貯炭場建設による環境影響を何も示さないまま、電発は立ち退きを申し入れます。住民は「工事中を含めて騒音はどうなるのか。振動はどうなるのか。日照はどうなるのか」と不安をかき立てられ、「環境問題以前の問題だ」とやり方に憤りを示します。環境影響評価の意味が問われる出来事です。
一度、発電所を建設すると、最低40年稼働します。2060年まで考えたとき周辺住民に環境影響を及ぼさない配置図になっているか、これまでの経験を踏まえ、慎重に検討すべきです。
(文:広島県芸南地区火電阻止連絡協議会)
◆事務局追記◆
竹原新一号機のCO2排出原単位は0.785kg/kWhと報告されており、年間の排出量は330万トン以上となる見込みです。今年10月28日には、環境大臣が環境影響評価準備書に対する意見書を提出していますが、「2050年においても稼働していることが想定されることから、将来の二酸化炭素回収・貯留(Carbon Dioxide Capture and Storage; CCS)の導入に向けて、設置までのスケジュール等を念頭」にし、「必要な措置を講じること」などが盛り込まれています。 しかしこの件について、11月1日に開催された環境審査顧問会火力部会では、委員から指摘が出たものの、「CCSの手法が確立されていないので対応のしようがない」との説明がされ、アセスの中では対応できるものではないとの方向でまとめられるようでした。
◆竹原火力発電所新一号機完成予想
http://www.jpower.co.jp/news_release/pdf/news130514_2-2.pdf
●関連リンク
竹原火力発電所新1号機設備更新計画(広島県ecoひろしま~環境情報サイト~)
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/eco/h-h2-tetuduki-jpower-01.html
電源開発株式会社(J-Power)
http://www.jpower.co.jp
竹原火力発電所新1号機設備更新計画(経済産業省環境影響評価)
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/takehara.html
環境審査顧問会火力部会第三回資料(平成25年8月2日) http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/safety_security/kankyo_karyoku/h25_03_haifu.html
竹原火力発電所新1号機設備更新計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(環境省報道発表 2013年10月28日)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17301
●広島県芸南地区火電阻止連絡協議会
連絡先 広島県竹原市忠海床浦3-18-8 松田宏明方 電話 0846-23-2029