2017年8月3日、中川雅治参議院議員が新環境大臣に就任しました。記者会見やメディアのインタビューでは、世界は脱石炭に向かっているという認識を示し、石炭火力発電にはCO2の問題があり、温暖化対策に逆行するとして「経済性の観点のみで新増設は認められない」と答えています。
環境大臣は、環境アセスメントの手続きにおいて、事業者が提出する環境影響評価配慮書などに対する意見を述べます。形式としては経産大臣に宛てて出されるものですが、環境省の姿勢を示し、当事者である事業者だけではなく、他の事業者の事業実施判断へも影響を与えるものです。
2009年5月には、福島県で計画されていた石炭火力発電所である小名浜火力発電所(仮称)に対して、温暖化対策が十分ではなく京都議定書の目標達成に支障をきたす可能性があることから「是認しがたい」という環境大臣の意見書が公表され、計画は中止するに至っています。その後、2012年まで石炭火力発電所の建設計画は1件もありませんでした。
2012年以降に続々と現れた計画に対しては、西沖の山石炭火力発電所(電源開発と大阪ガスの共同出資)建設計画に対して「是認しがたい」、千葉袖ヶ浦火力発電所(九州電力、出光興産、東京ガスの共同出資)に「是認できない」、武豊火力発電所には事業の再検討を求めるなど、複数の計画に対して否定的な意見が出されています。2015年に「是認できない」とされた千葉県市原市での計画(東燃ゼネラルと関西電力の共同出資)は、2017年3月に計画中止が発表されました。このほか、石油から石炭への燃料転換計画が中止となったり、計画の当面延期が発表されるなど、徐々に石炭火力発電所の新増設計画が頭打ちされる状況になってきました。
前任の山本公一環境大臣は、記者会見やインタビューにおいても石炭火力発電への疑念を投げかけ、事業中止を歓迎するなど、これまでになく厳しい目を向けてきました。新任の中川大臣は、基本的には石炭火力に対して否定的な姿勢を踏襲するようですが、気になるのは、「『単純な』新増設は認めない」「全て(の計画)がNOとは言わない」など、計画容認の余地を残していることです。石炭火力発電は、環境に多大な負荷を与え、経済性の上でも座礁資産となるリスクを抱える先行きの暗い事業です。大臣はきっぱりと石炭火力発電事業を認めない姿勢を示してほしいものです。
関連リンク
中川環境相石炭火力増設「認めぬ」 前任方針を踏襲(2017/8/7 毎日新聞)