電源構成、2028年に石炭37%に
日本のエネルギー基本計画では石炭と原発を「重要なベースロード電源」として、それに基づくエネルギー長期需給見通しでは、2030年の電源構成を原発20~22%、再エネ22~24%、LNG27%、石炭26%、石油3%としている。パリ協定に基づく1.5℃目標を達成するには、2030年に石炭火力をゼロにすることが求められるが、大きくかけ離れる日本政府の見通しには批判の声が強い。しかし、この春に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が示した電力供給計画のとりまとめでは、政府の方針よりもさらに大幅に石炭が増加し続けることが明らかになった。
供給計画取りまとめでは、各電力事業者の報告として10年先までの見通しを集めているが、その結果2028年に原発は再稼働を想定せず4%、再エネ26%、LNG29%、石炭37%、石油3%と示された(グラフ1)。石炭が37%になるというのは、これまでの石炭重視とし、カーボンプライシングもほとんどない政府の政策シグナルから当然の帰結とも言える。また一方で、火力では、LNGが2018年の41%から2028年に29%と割合を大きく減らしているのに対し、石炭火力が現状の30%から2028年に37%と大幅に増加し、発電量自体も現状よりも増える。
グラフ1.発電端電力量の推移(全国合計)
発電設備も石炭・LNGが今後10年で拡大
また、発電設備の増加傾向もあらためて明らかになった。石炭だけではなく、LNGもほぼ同規模で新設計画があり、石炭は824.1万kW、LNGも781.7万kWと新規計画がある。パリ協定長期戦略で示された「火力依存を低減する」どころか、「火力は今後増加する」傾向が浮き彫りになった。
非効率石炭火力のフェードアウトも進まない
政府は、「非効率石炭火力のフェードアウト」をうたっているが、2028年度までの発電事業者による廃止計画は、石炭が75.6万kWと新設計画の1割にも満たない。LNGは528.7万kWと石炭よりは多く廃止計画が出されているものの、やはり新設計画の規模にはおよばない。また、経済産業省が来年から導入する「容量市場」が、老朽火力もゾンビのように生き残らせるインセンティブになるだろう。
LNGの設備稼働率は33.6%に低下
OCCTOの供給計画によると、電源別の設備利用率は、石炭が約7割程度と横ばいであるのに対し、LNGが2018年に53%だったのが10年後には33.6%と20ポイントも下がる。
グラフ3.電源別設備利用率の推移(全国合計)
経済産業省は現在、2030年の電源構成で示された各電源の割合の達成を目標に、エネルギー供給構造高度化法、省エネ法などに数値目標を含めた制度を織り込み、電力市場を事実上歪めていく政策を次々と導入している。また、長期戦略で示された「脱炭素社会の実現」「火力発電からのCO2排出削減」「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」「火力発電への依存度の引き下げ」と示した。しかし、現実は石炭火力が今後も増える傾向で動いていることがOCCTOの発表からも明らかになった。各電力事業者が今後電力事業を続け、自主的取り組みでの気候変動対策の下では、石炭火力は大幅に増加し、脱炭素社会からはかけ離れていくことは必然だ。手遅れにならないように、政策転換と再エネを加速させる制度の見直しに着手すべきだ。
参考:電力広域的運営推進機関「2019年度供給計画の取りまとめ」(2019年3月)(PDF)