【レポート】グリーンピースジャパン『石炭火力発電におけるアンモニア混焼ーー高価で有害なJERAと日本政府の選択』


国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は3月27日、アンモニア燃料についてのブリーフィングペーパー『石炭火力発電におけるアンモニア混焼ーー高価で有害なJERAと日本政府の選択』を発表しました。2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を達成するために日本政府は力を注ぎ、アンモニアを不可欠なエネルギーとされている一方、混焼は多数の問題を持ち、石炭の延長にすぎないと考えられます。要点は以下の通りです。

主なポイント

  • アンモニアには、燃焼率の低さ、NOx排出量の多さ、放射強度の弱さなど、複数の課題がある。アンモニア混焼の割合は、最近、ようやくカロリーベースで20%に達したばかりで、100%アンモニア燃焼の商業的利用は実証されていない。
  • 政策や規制の大幅な変更がない限り、2050年までにグリーン・アンモニア(注1)が、化石燃料から製造されたアンモニアと価格で競合するのは難しい。一方、ブルー・アンモニア(注2)は、その製造に使用されるEOR(原油増進回収法)技術が化石燃料のさらなる使用を促進するため、カーボン・ニュートラルであるとは言えない。
  • JERAの石炭火力発電の燃料費は、中位の燃料価格では、CCSなし(ブラウン・アンモニア、注3)の場合は年間2.68兆ドル(約291兆円)増加、CCSを使用した(ブルー・アンモニア)場合は年間3.34兆ドル(約363兆円)増加し、正味の増加はそれぞれ1.207兆ドル(約131兆円)と1.561兆ドル(約169.7兆円)になると見込まれる。
  • 超々臨界圧(USC)の石炭火力発電の中位のLCOE(均等化発電原価)は73ドル/MWh。アンモニアを導入することで、ブラウン・アンモニアの場合は98ドル/MWh、ブルー・アンモニアは106ドル/MWhに増加すると予測される。対照的に、直近の太陽光発電の入札での落札価格は100ドル/MWhを下回る低価格で、今後更なる下落が見込まれる。また、政府は2030-2035年に洋上風力の価格を62〜74ドル/MWhにすることを目標にしている。
  • 100%石炭火力発電所と価格競争をするためには、ブラウン・アンモニア混焼の場合は99ドル/tCO2、ブルー・アンモニアの場合は122ドル/tCO2の平均炭素税が必要になると考えられます。JERAの石炭火力発電所計画のもつ問題がさらに増える可能性がある。
  • アンモニアの原料となる水素は、上流の生産から下流での使用まで、脱炭素化されたグリーンな水素のサプライチェーン確立にまったく貢献しない。
  • アンモニア混焼は、石炭火力発電所の延命のための技術に過ぎない。アンモニア混焼は実験的で、技術的にも初期の段階にあり、石炭火力を主とする企業やタービン製造会社の救済措置といえる。安価で脱炭素化した電力の未来が風力と太陽光にあることは、既に明確に実証されている。

 

リンク

ブリーフィングペーパー『石炭火力発電におけるアンモニア混焼ーー高価で有害なJERAと日本政府の選択』(Link)(PDF)
JERA and Japan seek costly and dirty alternative to RE: Lengthening the lifeline of coal power in Japan (PDF)

 

作成・発行:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

発行:2021年3月27日