【レポート】世界の電源構成で再生可能エネルギーが初めて石炭を上回る!


10月7日に、英シンクタンクEmberが発表したレポート「Global Electricity Mid-Year Insights 2025」には、2025年上半期における世界の電源構成に占める再生可能エネルギー(再エネ)の割合が初めて石炭火力を上回り、最大の電力源となったことが示されています。

この調査は、88か国を対象に実施されました。その結果を以下に記載します。

  1. 2025年上半期の世界の電力需要は2.6%(369TWh)増加。この増加分は太陽光の前年同期比31%増(306TWh)と風力発電の7.7%増(97TWh)によって賄われ、太陽光発電だけで増加分の83%を賄ったこととなります。水力発電は大幅に減少し、バイオマス発電量の減少はわずかに留まり、原子力は微増しました。化石燃料による発電量は0.3%減となっています。
    1. 2025年上半期、太陽光発電は過去最高の306TWh(31%)に増加しました。これにより太陽光発電の世界の電力構成における割合は6.9%から8.8%に上昇。世界の太陽光発電増加量の55%を中国が占め、次いで米国(14%)、EU(12%)、インド(5.6%)、ブラジル(3.2%)が続いています。その他の地域は9%の貢献に留まりました。4カ国で電力の25%以上を太陽光で賄っており、少なくとも29カ国では10%を超えています。前年同期は22カ国。2021年上半期のわずか11カ国からは倍増したことになります。
    1. 太陽光発電の大幅な増加とそれに続く風力発電の伸びにより、再エネが石炭火力発電を初めて上回りました。再エネは363TWh(+7.7%)増加し、5,072TWhに達した一方で、石炭火力は31TWh減の4,896TWhとなっています。これにより、世界の電力に占める再エネの割合は34.3%(前年は32.7%)に上昇し、石炭火力の割合は33.1%(同34.2%)に減少しました。
    1. 2025年上半期の世界の化石燃料による発電量は、前年同期比27TWh減となりました。主要経済国では、中国とインドで化石燃料発電量が減少。両国ではクリーンエネルギーによる発電量が電力需要の増加分を上回った一方で、米国ではクリーンエネルギーの増加では電力需要の増加を賄いきれず、化石燃料発電が増加しました。EUでは、風力・水力・バイオエネルギー発電量の減少を補うため、石炭とガスの両方がわずかに増加しています。
    2. 2025年上半期、世界の電力需要が2.6%増加したにもかかわらず、CO2排出量は1200万t-CO2でわずかな減少となりました。中国(4600万t-CO2)とインド(2400万t-CO2)での減少分は、クリーン発電の伸びが需要を上回ったことを反映しています。これに対し、EU(1300万t-CO2)と米国(3300万t-CO2増)では前年同期比で排出量が増加しました。

    電力需要は高まっていますが、太陽光・風力発電は急速に拡大しており、増加した電力需要を100%満たしただけでなく(電力需要の109%を供給)、石炭火力の発電量をわずかではありますが減少させることとなりました。

    発電総量に占める石炭と再エネの割合:Emberレポートより

    本レポートで特出ししている中国、インド、欧州連合(EU)、米国で世界の電力需要の63%、CO2排出量の64%を占めています。2025年上半期、クリーンエネルギーの拡大を牽引したのは中国や開発途上国であった一方で、アメリカやEU加盟国といった富裕国では化石燃料への依存がこれまで以上に高まっていました。アメリカでは、トランプ政権の政策の影響もあって再エネの成長が予測より鈍化し、クリーンエネルギーの供給量が電力需要の増加に追いつかなかったため、化石燃料への依存が高まることとなりました。EUでは、太陽光発電が大幅に伸びたものの、風力・水力・バイオエネルギーの減少によりガス発電が増加し、石炭火力発電も小幅に増加。その結果、排出量がわずかに上昇することとなりました。

    中国
    中国では依然として石炭火力発電が大きな割合を占め、世界最大の温室効果ガス排出国ですが、クリーンエネルギーの成長率では他国を大きく引き離しており、世界全体の太陽光発電の増加分の55%、風力発電の増加分の82%を占めています。

    アメリカ
    世界最大の経済大国であるアメリカは、2025年上半期における世界の電力需要の15%(2,190TWh)を占め、世界の電力部門のCO2排出量の12%を占めています。アメリカの太陽光発電と風力発電の増加は電力需要の伸びに届かず、電力需要増加分の65%を満たすに留まりました。その不足分を補うために石炭およびガスによる発電が増加したことが排出量の増加につながりました。

    インド
    インドは、2025年上半期における世界の電力需要の6.2%、世界のCO2排出量の9.1%を占めていますが、同時に、クリーンエネルギー源の増加は電力需要増加の3倍以上に達し、太陽光と風力発電設備の記録的な導入が石炭発電と排出量を押し下げています。

    EU
    EUは、2025年上半期における世界の電力の8.8%(1,303 TWh)を発電し、世界の電力部門排出量の4%(293 MtCO2)を占めています。太陽光発電は電力需要を上回る伸びを見せたものの、風力と水力の発電条件が悪化したため発電量が減少し、ガス発電量と排出量が増加しました。

    Emberは、地域差はあるものの、世界の太陽光と風力の発電量が電力需要の増加に追いつきつつあると分析し、我々が脱炭素社会を目指す上で「重要な転換期を迎えている」と指摘しています。

    Emberのプレスリリース:Solar and wind met all electricity demand growth, leading to a slight fall in fossil fuel generation
    レポートダウンロードページ:Global Electricity Mid-Year Insights 2025

    参考

    Emberによる2024年の世界の発電状況の変化を俯瞰した報告書「世界電⼒レビュー2025(日本語)」はこちら(PDF
    Global Electricity Review 2025(リンク

    作成・発行:Ember
    発行:2025年10月7日