自動車メーカーのマツダ(広島市)は、広島県の本社工場の自家発電用石炭火力発電設備を「アンモニア専焼」に置き換える計画(2024年8月に発表)を断念する方針を明らかにしました。
アンモニア専焼では削減目標の達成が困難
マツダの発表では、「今後の代替燃料の調達環境や技術の進展を見据え」、自家発電設備の燃料をアンモニア専焼への転換するというこれまでの方針を見直したとしており、燃料となるアンモニアの調達・採算性の面で難しいと判断したと見られます。
JBCでも再三指摘してきたとおり、アンモニア燃料は天然ガス由来の「ブルーアンモニア」を利用する場合には製造過程でCO₂が発生するため「ゼロエミッション」とは言えず、さらにガスの採掘に伴うメタン漏出の問題も残ります。実際、自治体の審査会においても「燃料のアンモニア利用はグリーンウォッシュにあたるのではないか」という懸念が指摘されていました。こうした技術的課題や環境負荷の懸念を抱えたまま進められていた計画の見直しは、合理的な判断だと言えます。しかし問題は、これに伴い2030年の削減目標を緩めている点です。
石炭火力廃止と再エネ転換が次の課題に
マツダ本社工場では依然として老朽化した石炭火力発電所が稼働しています。これらを「2030年をめどに廃止」し、必要な電力の大部分を外部からの調達に切り替えることで、自社の二酸化炭素排出を削減するとのロードマップを掲げています。本社工場では、石炭火力の廃止後、都市ガスを燃料とするコージェネレーションシステムを導入し、将来的に水素転換を検討するとしていますが、ひとたびガス火力を導入すれば、水素燃料への転換は容易ではありません。また水素も、化石燃料由来で、製造過程の環境負荷を伴うグレーまたはブルーではなく、グリーン水素に限定しなければ、カーボンニュートラルにはなりません。
マツダは2035年までに「実質排出ゼロ」を掲げていますが、今回の計画の見直しにより、2030年のCO₂削減目標を当初の「2013年度比69%減」から「46%以上減」へと引き下げました。これは、脱炭素への取り組みが後退していると言わざるを得ません。市民の健康と地球の未来のために、石炭火力廃止を確実に実行し、真に持続可能な再生可能エネルギーへの転換を進めることが、次に求められる課題です。省エネへの取り組み、再生可能エネルギーやCN(カーボンニュートラル)燃料の購入・活用などを進めることで2050年のサプライチェーン全体でのCNを目指すと表明していますが、化石燃料からの早期撤退、再生可能エネルギーへの転換を期待します。
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