Japan Beyond Coalが始動してから3年。日本でも石炭火力発電を巡る議論は大きく変化しました。


夫馬賢治

ニューラルCEO/信州大学グリーン社会協創機構特任教授

以前は、存続が当たり前のように考えられてきましたが、すでに政府の方針としても、低効率の発電所は減らしていく路線が決定しました。

残る課題は高効率と言われる石炭火力発電所です。石炭火力発電所を例外なく削減してくことは、もはや世界全体の既定路線です。新興国でも未来に渡って石炭火力発電所を存続させるロードマップを敷いているところはなくなってきています。金融機関が集うGFANZ(グラスゴー金融同盟)でも、石炭火力発電の段階的廃止は大方針の一つとなっており、日本でも日本生命保険は、ブラウンフィールドの例外はあれど、高効率石炭火力発電へのプロジェクトファイナンスを禁止した第1号の大手金融機関となりました。

2023年には世界全体で観測史上最も暑い夏となり、気候変動による自然災害の脅威も増してきています。気候変動による食料安全保障への懸念も急速に高まっています。各国では目下エネルギー価格の高騰が大きな社会負担となっていますが、国際再生可能エネルギー機関は8月、2022年の世界の発電コストは、再エネにより76兆円も減額できたと発表しています。エネルギー転換への投資をさらに加速するためには、期限を定めた段階的廃止を掲げることが重要だと考えています。


プロフィール

ESG金融・サステナビリティ経営アドバイザー。環境省、農林水産省、厚生労働省の有識者委員。東証プライム上場企業や大手金融機関をクライアントに持つ。スタートアップ企業やベンチャーキャピタルの顧問も多数務める。テレビ、ラジオ、新聞、ウェブメディア等で解説を担当。著書『ネイチャー資本主義』(PHP新書)、『超入門カーボンニュートラル』、『ESG思考』(講談社+α新書)、『データでわかる 2030年 地球のすがた』(日本経済新聞出版)他。