2024年2月22日、横須賀石炭火力の環境アセスメントで確定通知を出した国に対して、住民らが確定通知の取り消しを求めている裁判で、東京高等裁判所は、原告らの請求を棄却した一審判決をそのまま維持する、控訴棄却の判決を下しました。
判決では、IPCC第五次報告書と1.5℃特別報告書の記載を引用した上で、「気候変動により日本を含む世界各地における気象災害や海洋の状況の変化等が生じ、人々にさまざまな被害をもたらしていることが深刻かつ重大な事態であることは言を待たない」と示されました。一審判決では気候変動問題に触れなかった点について、気候変動が人々にさまざまな被害をもたらす深刻な事態であること事実認定したという点では前進も見られます。
しかし、地球温暖化被害については、「本件新設発電所の稼働による二酸化炭素の排出が地球温暖化に寄与するとしても、同排出に起因する事象による被害のおそれを本件新設発電所周辺の居住者等の特別の範囲の者との関係で特に増大させるものとは認められない」とし、控訴人・原告適格を否定しています。
また、地球温暖化についての環境アセスメントについても、「本件新設発電所単体から排出される二酸化炭素により、地球規模で進行する温暖化に伴う災害等による被害の規模ないし頻度が有意に増大するものとは認め難い」として、温室効果ガスの排出による環境影響評価をしないことに問題はないとしました。
さらに、「環境影響の低減が図られる」場合に認められる、環境アセスメントの簡略化についても、弁護団は1970年当時までさかのぼらないと新設発電所の影響が軽減されたと言えないことを主張していましたが、「近時の稼働時と比較して現実の環境影響が低減することを求めるものではない」としています。
弁護団・原告団は同日声明を発表し、「今回の判決は、深刻化する地球温暖化の被害に向き合わない不当判決と言わざるを得ない」としています。
なお、この判決を受けて、鈴木陸郎原告団長は上告することを表明しています。
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