北陸電力は2025年2月27日、2024年度を目途に廃止する計画としていた富山新港火力発電所石炭１号機（25万kW）の廃止時期を2028年度を目途とすると発表しました。この廃止延期宣言は今回が２度目。2017年にも、当初予定していた2018年の廃止を2024年度までに延期することを発表していました。結局当初から６年延期し、加えて今回の発表ではさらに４年も延期するとのことで、10年もだらだらと石炭火力を使い続けるという宣言です。能登半島では、2024年1月の地震の被害に加えて、9月には気候変動の影響で甚大な豪雨被害にも見舞われました。気候変動を加速するような行為は決して許されるものではないでしょう。

そもそも、北陸電力は、LNG火力１号機の建設計画の発表に際し、石炭１号機をリプレースする（つまり古い発電所を廃止して、新しい発電所につくり変える）として環境影響評価を簡略化する措置をとっていました。LNG１号機は、2018年11月から稼働を開始しており、完全なる約束違反です。

それにもかかわらず、計画を一転し、廃止時期をさらに4年も延期することとした理由に、次のような点をあげています。

（１）第７次エネルギー基本計画で、データセンターや半導体工場などによる将来的な需要増加が見込まれたことをうけ、北陸エリアにおいても同様の傾向になる可能性があること。
（２）燃料調達面で、ロシア・ウクライナ問題や中東情勢の悪化等の影響により、世界のエネルギー資源の動向は、不安定かつ不透明な状況にあること。
（３）北陸電力の志賀原子力発電所２号機が、新規制基準適合性確認の審査中であることや新規の低炭素火力電源として富山新港火力発電所ＬＮＧ２号機建設計画の検討を開始したが、短期的に十分な供給力を確保できる状況にないこと。
（４）令和６年能登半島地震で、七尾大田火力発電所１号機および２号機に甚大な被害が発生し、計画外で長期間停止したこと。

こうした経緯を踏まえ、北陸電力は現状において富山新港火力発電所石炭１号機を廃止することは極めて困難だと説明しています。しかし、理由の一つにあげている能登半島地震による七尾大田火力発電所１号機・２号機の長期間の計画外停止は２号機は2024年5月10日に、１号機は2024年7月2日に再稼働させており、理由とはなりえません。

能登地震以外の要因として、北陸電力がなかなか火力依存から脱却できない背景には、原子力発電の利用見通しの甘さがあります。能登半島地震は志賀原発で想定していた以上の揺れが観測され、再稼働の見込みはさらに不透明になりました。このような状況で石炭火力の延期が認められれば、再稼働出来ない原子力による発電分を埋め合わせるために多くの石炭火力が廃止されずに残ってしまうことになります。
　
結局、原発・火力依存体質が、石炭火力の延命をも招いています。この間に再生可能エネルギーを増やす、蓄電池を導入する、系統連系接続の柔軟性を高めるといった対応を優先的に進めていれば、石炭火力からの脱却を早めることができたはずです。

現在、北陸電力はさらに富山新港火力に新たにLNG2号機の建設を予定しており、現在環境影響評価配慮書を公開しています。その規模は60万kWにのぼり、石炭火力１号機・２号機を合わせた設備容量よりも大規模で、CO2の排出は甚大です。いつまで原発・火力依存を続けるつもりなのでしょうか。

北陸電力の火力発電所

発電所	ユニット名	燃料	出力（千kW）	運転開始年月	所在地
富山火力	4号機	原油重油	250	1971年 1月	富山県富山市
富山新港火力	1号機 2号機 石炭1号機 石炭2号機LNG1号機	原油 原油/LNG 石炭 石炭 LNG	240 500 250 250 424.7	1974年10月1981年11月1971年 9月1972年 6月2018年11月	富山県射水市
七尾大田火力	1号機 2号機	石炭 石炭/バイオマス混焼	500 700	1995年 3月1998年 7月	石川県七尾市
福井火力	三国1号機	重油/原油	250	1978年 9月	福井県坂井市
敦賀火力	1号機 2号機	石炭 石炭/バイオマス混焼	500 700	1991年10月2000年 9月	福井県敦賀市
出力合計			4,564.7

参考

北陸電力「富山新港火力発電所 石炭１号機の廃止計画について」（2025年２月27日）（PDF)
北陸電力「富山新港火力発電所 石炭１号機の廃止延期について」（2017年12月7日 ）（PDF)
発電所環境アセスメント情報「富山新港火力発電所石炭1号機リプレース計画 北陸電力株式会社」（PDF)北陸電力「七尾大田火力発電所２号機の運転再開について」（2024年5月10日）（PDF)
北陸電力「七尾大田火力発電所１号機の運転再開について」（2024年7月2日）（PDF)