【ニュース】豪NGOがJERAの地域住民軽視を指摘する公開書簡を送付


10月22日、オーストラリアの環境NGOのマーケット・フォース(MF)は、日本の最大手電力会社JERAが国内外で進めている化石燃料関連の開発事業において地域コミュニティの利害関係者(ステークホルダー)を軽視していることは、コーポレートガバナンスコードに違反すると指摘する公開書簡を日本取引所グループ(JPX)と主要な機関投資家に送付したと発表しました。

この書簡は、JERAが、企業として果たすべき社会的責任の一環としてステークホルダーとの「積極的なコミュニケーション」やエンゲージメントを約束すると表明しているにも関わらず、同社が事業を展開する国内外の地域社会のステークホルダーとの対話を拒否していることは、地域社会とのエンゲージメントを怠っており、日本のコーポレートガバナンスコードの基本原則となっている「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」における「ステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する」に反すると指摘しています。

この公開書簡には、オーストラリアのティウィ諸島のバロッサガス田開発事業、バングラデシュのマタバリサミットLNG発電所およびマタバリ陸上LNGターミナル事業、米テキサス州でのフリーポートLNG事業、愛知県武豊町のJERA武豊火力発電所、フィリピンの化石燃料ガス(LNG)拡張計画に関わる市民からの面談の求めに応じていない、あるいは対応に問題があることが示されています。こうしたJERAの対応については、国内外のNGOを含め多数の市民団体が賛同の意を表明しています。

書簡でも取り上げられたJERA武豊火力発電所は、2024年1月に爆発事故を起こし、地域住民を不安に陥れました。JERAは5月に事故の説明会を開催しましたが、9月3日に事故に対する再発防止策についてのリリースを発表して以降、現在までに住民への説明会などは開催されていません。武豊火力発電所(5号機)は、2022年8月の稼働開始以降、2024年1月を含めると4回の事故を起こしています。住民グループは複数の質問書をJERAに送付してきました。回答が得られたものもありましたが、迅速な対応とは言い難い上、返答は住民が納得できるものではありませんでした。また、事故から5か月後にようやく開催された説明会でも、住民が満足できる説明は得られませんでした。住民らの多くは、武豊5号機の再稼働に反対しています。

武豊町の環境問題を考える会作成資料:JERA 武豊火力発電所爆発問題と JERA 株式会社の対応(PDF)

爆発で壁面が黒焦げになったタービン建屋
道路を挟んで住宅に隣接する巨大な燃料貯蔵庫

武豊火力発電所は、住宅地に隣接している大型火力発電所です。「今後、事故が起きないようあらゆる角度から再発防止策を検討いたします」との回答のみでは具体策に欠け、地域住民の安心は得られません。

MFの公開書簡により、JERAが国内にとどまらず、他国でも地域住民との対話を拒否し、説明責任を果たさず、市民社会の声を聞かずに事業を強行していることが明らかになりました。MFは、こうしたJERAの姿勢は、同社の評価を下げる(レピュテーションリスク)だけでなく、財務リスクにつながる可能性があり、JPXや投資家にとって憂慮すべきものであるとして、JERAへのエンゲージメントを求めています。

JERAは、日本最大手電力会社として高飛車に対応するのではなく、真摯に地域住民らと向き合うべきです。

公開書簡

日本取引所グループ(JPX)および投資家への公開書簡「株式会社JERAのガバナンスに関する懸念:地域社会とのステークホルダーエンゲージメントの軽視」(PDF

MFのプレスリリース:日本取引所グループ(JPX)と投資家宛にJERAの地域コミュニティ軽視に関する公開書簡を送付(リンク

世界各国の地域コミュニティからの声 

地域社会のステークホルダーとの対話を軽視するJERA(リンク