【ニュース】GENESIS松島意見書募集市民の声はどこに？ | Japan Beyond Coal 石炭火力発電所を2030年までにゼロに

2021年10月にGENESIS松島計画の環境アセスメント手続きの一貫としてJ-Power が作成した「計画段階配慮書」（以下配慮書）に対する意見募集が10月末に締め切られ、その結果が公表されました。

意見募集の呼びかけはこちら

Japan Beyond Coalをはじめさまざまな団体が応募を呼びかけた結果、855件もの意見書（J-Power集計）が市民から寄せられました。その多くがGENESIS松島計画の実施に対する強い反対、懸念を示すものだったにもかかわらず、J-Powerの回答は配慮書に記述したことやJ-Powerの中長期計画からのコピーアンドペーストを大量に繰り返す、形式的対応に終始するものでした。

参考１：計画段階環境配慮書について提出された意見の概要と事業者の見解（第５８回長崎県環境影響評価審査会資料3）
https://www.pref.nagasaki.jp/singi/singi_index.php?sgno=31#kekka

残念ながらJ-Powerの対応からは、多くの意見書が指摘した本事業の以下のような問題を真摯に受け止めているのかについて疑問が残ります。^＊

①この計画は石炭延命策にすぎない
この計画は、1981年に運転を開始した旧式の石炭火力発電所に石炭のガス化発電設備を付け加え使用し続けられるようにするものです。計画が実施されれば長期にわたってCO2の排出を固定化することになります。

②実用化にはまだ時間を要するイノベーション
J-Powerは、本計画を通じてこのガス化設備を付加する技術の商用化、将来の水素・アンモニアの発電での利用や、炭素回収・利用・貯留（CCUS）の実現への足がかりを得たい考えのようです。しかし、まだ実現の目処が立っていないところも多い技術の研究開発を言い訳に石炭を発電に使用し続けることは、結局長期にわたるCO2の排出に繋がり、パリ協定における1.5℃目標、菅前首相が表明した2050年カーボンニュートラルの実現をより困難にします。

③パリ協定に整合せず、座礁資産に
先日開催されたCOP26での議論からも、石炭火力発電に対して厳しい国際的な合意が確立したことは明らかで、投資回収に必要な期間運転することができずに終わる、いわゆる「座礁資産」となるリスクが高い計画です。

GENESIS松島計画は未来につながるのか

この計画が発表された当初の立地自治体の西海市のコメントは脱炭素社会の実現や、雇用や地域経済への波及効果、発電プラント関係に優位性を持つ長崎県全体にとっての経済効果などを理由に、諸手を挙げて計画の推進に対して協力することを表明するものでした。「将来のCO2フリーによる水素発電・水素製造に向けての第一歩となる石炭ガス化技術を活用したシステム」の導入に期待するとしていますが、本当にこの計画は脱炭素の未来につながるのでしょうか。

参考２：「脱炭素社会モデル地域」へ、ついに大きな一歩!!（西海市）
https://www.city.saikai.nagasaki.jp/shisei/shinoseisaku/3/10/2/6981.html

上で説明したようにこの計画には多数の問題があり、多くの市民がそうしたことに懸念を示していることが意見に示されています。

西海市は「脱炭素社会モデル地域」を市の目標に掲げ、江島(エノシマ)沖洋上風力発電の推進にも取り組んでおり、江島沖は洋上風力発電の有望な区域として国の指定も受けています。ぜひ西海市や長崎県は、意見書で示されたGENESIS松島計画を危惧する市民の声を聞き、より持続可能な社会・産業構造への転換、ジャストトランジションに取り組まれることを希望します。

参考３：第1回長崎県西海市江島沖における協議会　洋上風力発電と、再エネ海域利用法等の概要（経済産業省資源エネルギー庁／国土交通省港湾局／長崎県　資料）
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2021/04/1619129994.pdf

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