【ニュース】環境大臣がGENESIS松島計画を事実上容認


12月16日、環境省は電源開発株式会社(J-Power)が長崎県西海市の松島石炭火力発電所2号機を「アップサイクル」する計画(GENESIS松島計画)の計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見を発表しました。

これは、日本政府がカーボンニュートラル宣言を表明して2030年の温室効果ガス削減目標を引き上げ、かつ11月のCOP26において世界でクリーンなエネルギーの導入促進と削減対策が講じられていない石炭発電の段階的廃止の加速を求めたグラスゴー気候合意が採択されてから初めて、環境大臣が石炭火力発電所の計画について意見したものです。

環境大臣は、「石炭火力発電を巡る国内外の状況が極めて厳しい状況を十分認識し、可能な限り早期にバイオマスやアンモニア等のカーボンフリー代替燃料の導入を進めること」「我が国の温室効果ガス削減目標と整合した対応の道筋が描けない場合には事業実施の再検討を含め、あらゆる選択肢を検討すること」などを求めたものの、事実上この計画を容認するような内容で、次のような問題があります。

    1. 松島火力発電所2号機(50万kW)は稼働から40年経過した発電所です。ここにガス化設備を付加しても石炭を燃焼し続けることになり、効果的なCO2排出の削減にはなりません。にもかかわらず、環境大臣は、「電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組むことが必要不可欠」と全体の問題に置き換え、個別のGENESIS松島計画に対して厳しい意見を述べていません。
    2. 大臣意見では、実現性の見えない「カーボンフリー燃料」構想を積極的に後押ししています。このことは、石炭火力の延命にほかなりません。政府指針の元、J-Powerや他の電気事業者などは、水素・アンモニアを発電燃料として使用する技術の開発を進めていますが、水素・アンモニアは製造過程でCO2排出を伴う上、バリューチェーン全体を見るとCO2排出の削減になりません。しかも、石炭のガス化では、化石燃料依存からも、燃料の国外依存からも脱却できません。実用化の低いイノベーション技術に賭けて非効率石炭火力を延命させることは、脱炭素の歩みを鈍らせることになります。
    3. 石炭火力発電所にガス化設備を備えてもCO2削減にはならず、大量のCO2を排出することになります。カーボンニュートラル宣言、2030年の温室効果ガス削減目標の引き上げ、グラスゴー気候合意といった国内外の削減目標とは整合しません。

本来、環境大臣は気候変動対策や国際社会の動向にも整合しない計画に対して「是認できない」と厳しく意見し、この計画の中止を求めるべきでした。

気候危機に向き合い、1.5度目標を本気で達成するには、既設及び建設中の石炭火力発電所の実質的な段階的配信(フェーズアウト)を実行すべきです。

環境大臣意見に異を唱える声をあげて、広く拡散していきましょう!

環境大臣意見(PDF)

参考

気候ネットワーク発出
【プレスリリース】 「GENESIS松島計画」への環境大臣意見は旧式石炭火力の延命の容認だ~気候危機に向き合うなら「是認できない」となるべきだ~(2021/12/16)(Link

FoE Japan発出
「GENESIS松島計画」への環境大臣意見―石炭火力発電容認に抗議(2021/12/21)(Link

【ニュース】COP26:Global Coal to Clean Power Transition Statement発表(Link