【ニュース】経産省、人目につかぬ形で九十九里沖CCS事業の試掘許可の意見を募集


2026年1月7日、経済産業省はひっそりと「二酸化炭素の貯留事業に関する法律第4条第1項の規定に基づく試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧について」を公開しました。首都圏CCS事業の要である海底地層の確認を目的とした調査であるにもかかわらず、「試掘」に限定し、CCS事業全体については全く言及していません。これに関して、様々な環境NGOや地元住民が問題点を追求しています。

何のための試掘かを明記せず

この試掘は海底下にCO2を貯留するのに適した地層(貯留層・遮蔽層)があるかを確認するためのものです。ではなぜ九十九里沖にCO2を貯留する必要があるのかといえば、東京湾側の工業地帯(内房)で分離・回収されたCO2をパイプラインで千葉県九十九里沖(外房)まで運んで貯留する「首都圏CCS事業」計画が進められているからです(首都圏CCSについては別記事を参照してください)。しかし、今回出された公告に「首都圏CCS」の説明は全く書かれていませんでした。

どこを掘る?

下の地図に試掘が予定されている海域(赤枠内)と坑井の位置(AとB)が示されています。

出典:試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧文書より

何が問題?

今回の試掘の許可に関する問題点を以下にまとめます。

1.首都圏CCS事業における位置づけと全体像が明確に説明されていない
この試掘は、首都圏CCS事業の実施を前提としているにもかかわらず、調査の目的は「貯留層・遮蔽層となり得る地層の存在を確認するため」としか書かれていません。これでは、住民や関係者が試掘とその先にある首都圏CCS事業の全体を理解することができません。試掘の結果がどのような事業に使われるのか、明らかにすることが必要と考えます。

2.あまりにもひっそりと出されていた告知ー本当に意見を募る気があるのか疑問
経済産業省 資源エネルギー庁のウェブサイト内の特定区域の指定に関するお知らせにPDFを掲載しているのみで、九十九里周辺の住民に案内することもなく始まっていた今回の公告。文書(全部で9ページ)には試掘と首都圏CCS事業との関わりは全く書かれていないのと同様、公告に対して寄せられる意見がどう扱われるのかも示されていません。

3.坑井の詳細情報がない
地図上に2つの評価井(A,B)は示されていますが、そこから掘削されるパイプラインについての詳細は明らかにされていません。上図の赤枠で囲った範囲内とはいえ、どこで何が行われているのかはまったく分かりません。

4.試掘の安全性や環境への影響評価が記載されていない
試掘方法(工法)は書かれていますが、限られた情報しかなく、試掘における安全性とは何を意味するのか、試掘による環境への影響をどう評価するのかは記されていません。指定区域および海域は良質な漁場であるとともに多種多様な海洋生物が生息しています。試掘時と試掘後に環境影響を測定・評価しておかなければ、貯留層・遮蔽層の有無だけで首都圏CCS事業の可否が判断されてしまうことになりかねません。

5.漁業や観光産業に携わる関係者への説明が行われていない
今年4月には試掘が始まってしまう予定となっているのに、この公告が出された時点では、漁業関係者に限らず、指定海域を航行する船舶関係者、夏の観光産業やサーフィン関連ショップなどの関係者も含めた被影響者への周知・説明が行われたとは確認できませんでした。そうした中で公告自体を広く案内しないばかりか、被影響住民・関係者への説明を行う前に意見応募を締切るというのは、住民軽視と言えるのではないでしょうか。

6.意見書の提出者を限定している
この意見募集は「試掘の許可について利害関係を有する者は(中略)意見書を提出することができる。」を対象とすると書かれています。誰が利害関係者に該当するのかは本文書のみならずCCS法でも示されていないのに、意見提出者を限定するような書き方をしている上に、5で述べたように被影響住民への周知・説明は行われた形跡がありません。

7.住民説明会で首都圏CCS事業の全体を説明されていなかった
今回の意見募集には一切「首都圏CCS事業」が触れられていませんが、これまでに個々に開催された住民説明会のいずれにおいても、計画全体を統括した説明は行われていません。

8.試掘調査の結果は公開されるべきなのに…
試掘により貯留層・遮蔽層の存在が確認されるか否かは首都圏CCS事業の実施を左右する重要なものです。であればこそ、試掘調査の結果と、それをもとにした事業判断についても公開すべきですが、調査結果の扱いについては何も記されていません。

首都圏CCS事業には、首都圏CCS、INPEX、日本製鉄、関東天然瓦斯開発がかかわっていますが、いままでに開催されたのはパイプライン埋設予定地の周辺住民向けの説明会のみで、CO2貯留地である九十九里周辺での説明は行われていません。官民が一体で事業を進めているのに、住民への説明では官と民それぞれの役割がどうなっているかしか説明されず、事業全体が見えにくくなっています。今回の公告では試掘だけを意図的に切り離して扱うことで、首都圏CCS事業との関係性や該当海域で行う予定のCO2貯留の全体像を把握しにくくしています。現状ではCCS事業は環境アセスメントの対象外なので、試掘の段階から周辺環境への影響を評価しておくことは重要でしょう。

そもそも、CCSはコストが高く、経済合理性が悪いと指摘されています。「脱炭素戦略の一貫」という錦の旗を掲げた官民が住民や市民社会の意見を聞かずに事業を進めてしまうことがないように、注意していかなければなりません。

▼JBCパートナからの意見

気候ネットワーク:【意見書】千葉県九十九里沖での首都圏CCS事業の試掘の許可に係る公告に対する意見(2026年2月3日)
FoEジャパン:九十九里浜沖におけるCCSのための試掘に関する意見を提出
東京湾の会】千葉県九十九里沖での首都圏CCS事業の試掘の許可に係る公告に対する意見を提出しました