2023年2月、神戸発電所4号機が営業運転を開始し、神戸の石炭火力発電所が4基体制となり、1年を迎えました。神戸製鋼所は、神戸発電所3・4号機設置計画に係る環境影響等について、兵庫県及び神戸市へ条例に基づき、事後監視調査結果を取りまとめ「神戸発電所3・4号機設置計画事後監視調査結果報告書(令和4年度)(2022 年4月~2023 年3月調査)」とし提出・公表しています。また、神戸市と締結している環境保全協定に基づく報告書として、環境保全報告書を毎年提出、公開しています。この2つの報告書に記された大気汚染と温室効果ガス排出については、神戸石炭訴訟のニュースレターにとりまとめが報告1されていますが、今回は、そのとりまとめから見えてくる、石炭火力の環境影響と問題点についてまとめてみます。
大気汚染物質は、3・4号機の稼働により再び増加
神戸製鋼所は高炉跡地に石炭火力発電所を増設しました。これにより、大気汚染物質の排出量はどのように変化したのでしょうか。石炭火力発電所からは、二酸化炭素だけでなく、石炭の燃焼に伴う大気汚染物質であるNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)、ばいじんなどが排出されます(表1)。従前、神戸製鋼所は高炉廃止に伴う石炭火力の増設により、「大気への環境影響は低減する」と説明をしてきました。しかし、高炉廃止(2017年10月)により、大気汚染物質の排出量は一旦減少したものの、3・4号機の稼働により、再び増加していることが分かります(グラフ1)。高炉稼働時の排出量と同じ程度であれば、大気汚染物質を排出しても良いと捉えているのでしょうか?大気への環境影響は低減するとしてきた説明と食い違う実態が明らかです。
表1.神戸製鋼所神戸線条工場及び神戸発電所からの排出量(2022年度)
グラフ1. NOx、SOx排出量の推移
神戸石炭火力発電所からの温室効果ガス排出量は神戸市域の排出量を大きく上回る
石炭火力発電所が4基体制になったことで、年間温室効果ガス(GHG)排出量が、1,000万t‐CO2を超えました。神戸市からの排出774万t‐CO2(間接排出)と比較しても、排出量がどれほど大きいかが分かります。一方で、神戸市域からの排出量は高炉廃止によって大きく減少し、2021年は2013年比で‐37.5%となりました。これは、高炉からの排出は、神戸市からの排出に含まれますが、発電所からの排出は含まれないという、国の算定ルールによるものです。神戸市は(兵庫県も同様)、温暖化対策を進めるうえで、大きな支障を来す石炭火力発電所の増設があったにもかかわらず、算定方法のトリックで労せずして温室効果ガスの大幅削減を実現することができたわけです。
見かけ上のGHG排出が削減したと言っても、市民にとっては環境・健康リスクが高まってしまいました。神戸製鋼所は、現在4基稼働している石炭火力発電所のうち、1号機と2号機でアンモニア20%混焼を行い、2050年までには1〜4号機すべてをアンモニア専焼にするとの計画を表明していますが、大気汚染、気候危機の2つの問題を同時解決するには、混焼を模索するのではなく、早急に段階的廃止を検討すべきです。
神戸の石炭火力発電所の早期廃止を求めていくことが必要不可欠です。
神戸石炭火力発電所を止めるための市民の活動については、こちらをご覧ください。
神戸の石炭火力を考える会(リンク)
BankTrack: Residents of Kobe City, Japan, are fighting a coal power plant financed by Japanese megabanks – A Frontline Story of resistance to air pollution and climate change in Japan(リンク)