10月13日、東京電力グループと中部電力が共同出資する日本最大の発電事業者であるJERAが「2050年におけるゼロエミッションへの挑戦について」を発表しました。その内容は、2050年時点で国内外のJERA事業から排出されるCO2の実質ゼロに挑戦するとした「JERAゼロエミッション2050」と、それを実現していくための「JERAゼロエミッション2050 日本版ロードマップ」並びに「JERA環境コミット2030」が示されています。具体的には、2030年時点で次の目標達成をコミットするとしています。
・石炭火力については、非効率な発電所(超臨界以下)全台を停廃止します。また、高効率な発電所(超々臨界)へのアンモニアの混焼実証を進めます。
・洋上風力を中心とした再生可能エネルギー開発を促進します。また、LNG火力発電のさらなる高効率化にも努めます。
・政府が示す2030年度の長期エネルギー需給見通しに基づく、国全体の火力発電からの排出原単位と比べて20%減を実現します。
JERAは、Japan Beyond Coalのデータで示すとおり、国内の発電事業者の中で最も多くの石炭火力発電設備を保有する会社です。その対応は国内の温室効果ガスの大幅削減においても非常に重要なカギを握っていると言えます。
しかし、今回の発表に対してはJBCのパートナー団体からは厳しい意見も上がっています。気候ネットワークは、10月16日にプレスリリースを発表し、「2050ネットゼロは世界全体で達成すべき目標であり、火力発電はそれよりもはるかに早く削減を実現していなければならない。JERAの発表内容はパリ協定に全く整合するものではない。同社初の社債発行を10月22日に控えた時期での表明でもあり、ESG投資を呼び込むだけの単なる体裁づくりであるとの批判は免れられない。」と指摘しています。また、JERAの目標に対しては(1)限定的な非効率石炭火力の廃止はこれまでの既定路線にすぎない、(2)パリ協定との整合は、石炭火力の2030年全廃、2020年以降の新規稼働中止すべき、(3)火力発電のゼロエミッションの具体策が見えない、(4)排出係数目標もなんら追加的努力なく達成できる数字、(5)再生可能エネルギーの推進の具体策が見えない、などと指摘しています。
石炭火力を考える東京湾の会は、同じく16日に声明を発表し、2050年の「ゼロエミッション」を掲げたことは歓迎・評価しつつも、横須賀石炭火力発電所のように現在建設を進め2023年、2024年に稼働する方針を変えていない点を痛烈に批判するとともに、火力発電所における化石燃料とアンモニアや水素の混焼と、その混焼率を徐々に引き上げていくという小手先の対応では気候危機は回避できないと指摘しています。
ゼロエミッションを具体的にどう実現するのか、JERAの対応の深化が求められます。