【ニュース】JERAの「CO2が出ない火」広告中止を申し立て


気候ネットワークと環境問題に取り組む弁護士グループの日本環境法律家連名(JELF)は、10月5日、日本最大手の電力事業者JERAの広告は景品等表示法などに抵触しているとして広告の中止と、今後同様の広告を行わないよう求める勧告を日本広告審査機構(JARO)に提出しました。日本の脱炭素政策にも深くかかわるJERAの広告は「グリーンウォッシュ」との申立てに対するJAROの見解が待たれます。

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは、エコや環境に良いイメージをとりつくろうこと、あるいは環境に配慮しているように見せかけることです。実際には環境に配慮していない、その実態や効果が明らかではないのにもかかわらず環境配慮をうたう広告などは、視聴者や消費者に誤った情報や印象を与えてしまいます。欧州では、欧州委員会が今年の3月に「環境訴求指令(Green Claims Directive)」を発表し、企業が環境主張を行う場合、科学的根拠に基づいて立証することを求めるなど、グリーンウォッシュへの規制を強めていますし、欧州や米国では広告の差し止めや内容の変更を求める訴訟も増えています。(*国外でのグリーンウォッシュ広告への訴訟については、気候ネットワークPR資料「海外の広告に関する判断事例」も参照ください。)

問題のJERA広告

今回の申立ての対象となったのは、東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社であるJERAが、アンモニア火力発電を「CO2が出ない火」と宣伝しているもので、気候ネットワークとJELFは、この内容が景品表示法などに違反する疑いがあると指摘しています。

この広告だけでなく、電車内、セリーグの野球観戦中、さらにTOHOシネマズの映画館などでJERAの「CO2が出ない火」の広告を見て、「JERAって何?」と思われた方もいるでしょう。

アンモニアの活用の何が問題か

JERAは、2050年ネットゼロに向けたビジョン「JERAゼロエミッション2050」を掲げ、その取組みの一環として、<燃焼時にCO2を排出しないアンモニア活用>を広く知らせるためのTVCMやネット広告などの配信しています。アンモニア混焼は政府のエネルギー政策にも盛り込まれていますが、当面は水素・アンモニアのほとんどを国外で化石燃料から製造し、輸入する輸送してくる計画です。つまり、化石燃料を直接的・間接的に使用して製造された水素やアンモニアを燃料としている限り、「CO2が出ない」とは言えず、アンモニア混焼は石炭火力の延命につながる上に、経済合理性に欠けると批判されています。

JERAの広告をしっかり見て考えよう

  • アンモニアは製造・輸送過程で大量のCO2を排出する
    JERAは、「CO2を出さない火」「化石燃料に代わる新エネルギー源、燃やしてもCO2が出ないアンモニア」とうたいつつ、大量のアンモニアを製造する方法や製造時・輸送時のCO2排出をどのように処理するかに言及してしません。どうやって「CO2を出さない」火力を実現させるのでしょうか?
  • 具体的な説明もリスクの説明が不足
    JERAは2030年までにアンモニア混焼20%、2050年までに100%専焼を目指していますが、具体的な計画の進め方、規模や手段などは明らかにされておらず、現在進行中の碧南火力発電所(愛知県)での実証実験についても、その進捗などは説明されていません。いつまでに本当の「CO2が出ない」火力発電を実現させるのか。このままでは石炭火力発電所の温存に留まってしまう可能性があります。世界が求めるCO2排出削減を達成するための具体策が見えません。
  • コスト高なCCSへの依存
    水素やアンモニアの製造時に発生するCO2を炭素回収・貯蓄(CCS)で相殺するとの考えも聞かれますが、CCSは高コストであり実現性が疑問視される技術です。仮にタイムラインまでに実現できたとしても、そのコストは誰が負担するのか。国策としてわたしたちのお金を使って開発を進めた挙句に、化石燃料を使った発電を続けるコストを電気代に転嫁するのでしょうか?

本当の環境対策を進めるためには、正確な情報が必要ですが、現時点では、日本にはグリーンウォッシュに関する法的規制がありません。消費者・視聴者は虚偽広告に騙されないために知恵を絞り、グリーンウォッシュを厳しくチェックするだけでなく、事業者(広告主)に対して根拠に基づく説明を求めていかなければなりません。

参考リンク

気候ネットワークPR:【プレスリリース】JERAの「CO2が出ない火」広告は気候・グリーンウォッシュ~JAROに排除勧告を申立~(2023年10月5日)(リンク
グリーンウォッシュパンフレット「気候グリーンウォッシュとは」(PDF

日本環境法律家連盟(JELF)リリース:2023年10月5日、JERA「CO2が出ない火」広告はグリーンウオッシュ 。日本広告審査機構に申立てました(リンク