Japan Beyond Coal(JBC)は、中日新聞・東京新聞(12月24日)と朝日新聞(12月25日)の朝刊に、政府が進めるGX(グリーントランスフォーメーション)が気候変動対策に逆行していることを指摘し、排出削減にはならない技術にではなく、再エネ・省エネに投資を向けるよう呼びかける意見広告を掲載しました。
先進国の多くが2030年までに石炭火力発電所を全廃すると宣言し、2050年のカーボンニュートラルを目指しています。日本も、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを表明し、その実現に向け、岸田内閣官房下に置かれたGX実行委員会を中心に議論が進められ、12月22日に「GX実現に向けた基本方針(案)」が示されました。
政府が進めるGXの中に「脱炭素火力」が掲げられていますが、既存の石炭火力発電所へのアンモニア混焼はライフサイクルで見ればCO2排出削減効果は非常に小さいものです。まだ実用化されていない技術に依存するあまり、本来廃止されるべき石炭火力を延命させることになれば、気候変動対策に逆行してしまいます。また、燃料アンモニアの製造時などに排出されるCO2は回収・貯留(CCS)することが想定されていますが、CCSには技術的・地理的・コスト的な問題に加え、貯留量の限界や大気漏洩のリスクもあり、CCSを前提に燃料アンモニアまたは水素の利用拡大を推進すべきではありません。JBCは、GX基本方針が排出削減効果のない技術に時間と資金を費やす強力な後押しとなることに危機感を覚えています。
現在、日本には169基の石炭火力発電所が稼働しています。温室効果ガスの排出を2030年に半減、2050年に実質ゼロにするために今取り組むべきは、アンモニア混焼やCCSといった「技術イノベーション」により石炭火力を温存させることではなく、省エネや再エネに投資を向け、より実質的な脱炭素社会の実現に向けた手段である再エネの普及を進めることです。JBCは、2030年まで石炭火力発電所をゼロにし、再生可能エネルギーに早期転換することを求めます。
GX実現に向けた基本方針(案)では原発の最大限活用が注目されがちですが、「脱炭素火力」の支援策も、2050年の脱炭素社会の実現とこれから30年のエネルギー政策に大きく影響するものです。JBCの意見広告が、次世代に持続可能な社会を残すためのメッセージとなるように、本当のG(グリーン)への移行とは何かを考えてみませんか。
参考:
【ファクトシート】水素・アンモニア燃料 ─解決策にならない選択肢(リンク)
【ファクトシート】二酸化炭素回収貯留(CCS)ーその甚大なリスク(リンク)
【レポート】ブルームバーグNEFの分析レポート:「日本のアンモニア・石炭混焼の戦略におけるコスト課題」(リンク)
意見広告ダウンロードはこちらから(PDF)