【ニュース】GX基本方針とGX推進法案の閣議決定にNGOから批判が相次ぐ


政府は2月10日、GX基本方針とGX推進法案を閣議決定しました。

GX基本方針は、昨年12月22日にGX実行委員会でとりまとめられ、その後約1カ月間のパブコメ期間を経たものの、ほぼ原案どおりの内容で決定しています。パブコメでは、原子力に反対する多数の意見を含め、3,966件の意見が集まっていました。全国説明・意見交換会が各地で開催されていますが、パブコメ締め切り後の開催で「意見交換会の意見はGX基本方針には反映されない」という政府側の対応も明確になり、形ばかりのパブコメと意見交換であることが浮きぼりになっています。

GX基本方針は、カーボンニュートラルに向けて、原子力、水素・アンモニア、CCSを推進するもので、「石炭火力を延命させ、再生可能エネルギーの拡大など必要な気候変動対策の促進を妨げ、ひいては産業競争力を低下させ、電力コストの上昇などによる国民負担を増加させるもの(気候ネットワークプレスリリースより)」と批判されています。火力に水素やアンモニアを混焼してもほとんどCO2削減には効果がなく、CCSも実用化にはほど遠く実現性が薄く、むしろ火力発電所を維持温存することで長期に渡る大量のCO2排出の固定化につながります。この方針が示すロードマップは、1.5℃目標に必要な削減からは程遠い状況です。

主な問題

  • 原子力発電の事実上60年超の運転を可能にする運転期間延長や「革新炉」の新設、廃止が決定した炉の次世代型原発への建て替えの具体化を進め、原発を長期的に活用する方針に転換。
  • 水素・アンモニアを発電燃料として使用するための技術開発に巨額の投資を呼び込むとともに、CCSの事業化を推進する。CCSを前提として化石燃料の利用継続および水素・アンモニア混焼発電を推進するという方針。
  • 水素・アンモニアの混焼・専焼は、石炭をはじめとする化石燃料発電を温存させるものであり、石炭からの脱却を遅らせるだけでなく、気候変動対策としても問題が多い。
  • CCSは、仮に日本のCO2排出全量を回収できたとしても、国内には貯留場所がない。東南アジアなど他国にCO2貯留を任せて自国での排出を続けるというのは、国際社会に理解されない。
  •  今後10年間で必要となる官民合わせ150兆円規模の投資については、20兆円を政府資金とし、新たな国債「GX経済移行債(仮称)」を発行して調達する。これだけの資金を「脱炭素」の名目のもと、法案に結び付けて原子力と火力発電を維持する。
  • カーボンプライシング制度の本格稼働は2026年度以降に先送りされている(排出量取引制度は2026年度、化石燃料の輸入業者を対象とした炭素賦課金は2028年度に導入する)。

 

また、同じく閣議決定されたGX推進法案は、GX基本方針を裏付けるために必要な措置として明記されたもので、今国会に上程されました。GX推進法案に示されている炭素税についても脱炭素を加速するために必要な処置とは言えないとの批判があがっています。

GX基本方針の白紙撤回と、再生可能エネルギーの拡大に向けた政策措置に政策及び財政的資源を集中することを求めます。

参考1:関連発表

  • GX実現に向けた基本方針に対する意見募集の結果について(リンク
  • 経産省発表:「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました(リンク
  • 経産省発表:「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」が閣議決定されました(リンク

 

参考2:パートナー団体による抗議声明など

気候ネットワーク 

■【プレスリリース】GX実行会議の原発石炭回帰の方針に断固反対 気候変動対策に逆行、国費の浪費、経済衰退への道を進むべきではない(2022年12月23日
■<プレスリリース>気候変動対策に逆行するGX推進基本方針閣議決定への抗議声明(2023年2月10日

自然エネルギー財団

■コメント GX基本方針は二つの危機への日本の対応を誤る なぜ原子力に固執し、化石燃料への依存を続けるのか(2022年12月27日
■コメント GX基本方針およびGX推進法案の閣議決定にあたって(2023年2月14日

FoEジャパン

■FoE Japan声明「原子力と化石燃料推進のGX方針に抗議」(2022年12月21日

WWF 

■【WWF声明】遅すぎるカーボンプライシング本格導入と拙速すぎる原発方針転換のGX基本方針案に抗議する(2022年12月23日
■パブリックコメント提出意見 「GX実現に向けた基本方針」について(2023年1月18日
■【WWF声明】変革(G「X」)の意志なきGX基本方針の閣議決定に抗議する(2023年2月14日

グリーンピース・ジャパン

■12年積み上げてきたものを3カ月で覆す─政府が決めたグリーントランスフォーメーションの問題点(2023年2月13日