世界で石炭フェーズアウトが加速:
欧州は2030年までの石炭火力フェーズアウトの折り返し地点に到達!
世界各国が2030年に向けた石炭の段階的な削減(フェーズアウト)の取り組みを進めていますが、2021年3月23日にイギリスのWest Burton(ウェスト・バートン)石炭火力発電所が2022年9月に閉鎖されることが発表されたのをもって、欧州の石炭火力フェーズアウト計画は大きな節目を迎えることとなりました。West Burtonの閉鎖により、2016年以降、欧州の324の石炭火力発電所のうち、162か所が既に閉鎖、または2030年より前に閉鎖されることとなり、2030年までにすべての石炭火力発電所を閉鎖するという目標の折り返し地点に到達したことになります。
実際、欧州連合(EU)における石炭フェーズアウトは、驚くべきスピードで進んでいます。昨年だけで70を超える発電所の閉鎖が発表されました。各国の気候目標がこの動きを後押しする重要な役割を担っており、欧州28か国のうち14か国が、2030年までのフェーズアウトを表明しているか、すでにフェーズアウトを達成しています。
欧州のエネルギーミックスにおいて石炭火力発電の役割が急速に減少していることは、以下の点からも明らかです。
- 2016年以降、欧州各国の石炭火力発電所の半数以上が閉鎖となっている。欧州の石炭火力発電所の設備容量は、2016年の784TWhから、2020年の370TWhに52.8%減少。2020年の欧州の電量供給における石炭の割合はわずか13%。
- 欧州では、2020年の再生可能エネルギーによる電力供給が化石燃料を上回り、主力電源となっている。欧州で使用されている電力の38%が再生可能エネルギーによって供給されていたのに対し、化石燃料による供給は37%だった。
- 2020年、風力発電は9%増加、太陽光発電は15%増加し、この2種類の再生可能エネルギーによる電力供給が、欧州のエネルギーの5分の1を占めている。石炭火力が減少した分の半分は、2020年に新設された風力と太陽光によって既に充填されている。デンマークでは、風力と太陽光だけで2020年の国の電力の62%を供給。
2030年までに温室効果ガス排出を1990年比で55%削減するという欧州の新たな目標は、石炭フェーズアウトを加速させるでしょう。この目標を達成するためには、再生可能エネルギーによる発電の割合を2030年までに約70%に増やさなければなりません。最近では、世界的な石炭火力のフェーズアウトおよび石炭事業への融資の終了を求める欧州の声と相まって、世界でも石炭火力から再生可能エネルギーの未来に向けて移行する動きが進んでいます。
日本は、2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロ(2050年ネットゼロ)を表明したとはいえ、2030年以降も石炭火力発電所を継続利用する考えを改めていません。地球の温度上昇を1.5℃未満に抑えるという目標を達成するため、パリ協定に署名したOECD加盟国である日本にも、2030年までの石炭フェーズアウト目標を定めることが強く求められています。