80キロメートルに及ぶパイプラインで千葉県を横断して二酸化炭素を運び、九十九里沖に貯留する「首都圏CCS事業」では、今年7月に貯留候補地の九十九里沖で試掘工事がはじまりました。しかし、8月に複数の事故が発生し、地元住民等の間で不安が広がっています。この事態を受けて、九十九里の海をまもる会とJBCのパートナー団体である気候変動を考える東京湾の会、FoE Japan、気候ネットワークは、この事業を進める首都圏CCS株式会社に対して、試掘作業の即時停止の申し入れと公開質問を発出しました。
首都圏CCS事業計画
この計画は、INPEXと関東天然瓦斯開発が出資・設立した首都圏CCS(株)が、日本製鉄東日本製鉄所君津地区および京葉臨海工業地帯で排出されるCO2を、千葉県を横断する80kmのパイプラインで千葉県外房沖にまで運び、九十九里沖の帯水層に貯留するものです。年間のCO2貯留量は事業開始年には約140万トンを予定し、将来的には約500万トンとすることが見込まれています。今年7月6日、1本目の試掘となる「九十九里沖J-1」の作業が開始されたものの、翌月には重油流出、火災と立て続けに事故を起こしたのです。
試掘現場での事故
7月6日 九十九里沖約5kmの地点において、CCSの貯留適地を確認するための九十九里沖J-1試掘作業が開始
8月22日 作業支援船上で給油ホースが破断し、A重油約37リットルが海域に流出
8月29日 掘削リグ発電設備内のエアフィルターが発火し、焼け焦げる事案が発生
事業者は、どちらの事故・事案も周辺海域には影響がないと断言していますが、この試掘調査とは本来、当該海域で安全かつ長期的にCO2を地下貯留できる地層があるか、その貯留力を評価するためのものです。
首都圏CCS事業については、地域住民や環境NGOが、環境影響評価の欠如や地域社会との十分な合意がないまま進められていることも含め、様々な問題を指摘してきましたが、事業者は明確な説明および回答をすることもなく、CCSの必要性を繰り返し強調するに留まっていました。そうした状況の中、試掘開始後の短期間に事故・事案が続けて発生すれば、地域住民が不安に思うのは当然です。
4団体からの申し入れと質問
今回、4団体が発出した申し入れと質問は、現在の作業体制、安全管理体制、緊急時対応体制および環境保全措置が十分であるかを問い、検証の必要性を訴えるものです。
事業者に対し、以下の事項が明らかになるまでは試掘作業を継続すべきではないと訴えるとともに、状況を確認するための質問を送っています。
- これまでに発生したすべての 事故・事案について、原因、経緯、責任の所在および再発防止策を、第三者の検証を交えて明らかにすること。
- 許認可事項、届け出事項を公開し、手続きに落ち度のないことを第三者も確認できるようにして進めること
- 今回の事案で、充分な情報公開がされず、住民に不安を与えたことから、地域経済に配慮し、海洋環境、漁業、観光、景観および地域住民の生活への影響を改めて評価すること。
- 評価結果と再発防止策について、地域住民に十分な説明を行い、意見を聴くこと。
4団体からの意見・質問の詳細は、各団体のプレスリリースや提出文書(PDF)をご確認ください。
この公開質問に対して、首都圏CCS株式会社は9月18日にウェブサイトにて回答を掲載していますが、9月6日には試掘を再開していることが明らかになっています。
▼首都圏CCS事業について、今できることはこちら
【住民学習会】9月27日(日)開催
【署名】九十九里の海をまもって!二酸化炭素を九十九里沖海底に捨てる首都圏CCS事業を中止してください
国策で進められるCCS事業
事業者は、試掘作業中の燃料油の流出および発電設備の発火事案の発生にともない、掘削作業を一時中断していたものの、「原因究明と再発防止の対策を実施し、今後の作業の安全が確認できた」として9月6日には掘削作業を再開しています。
首都圏CCS事業は、経済産業省が選定した「先進的CCS事業」の一つに位置付けられており、9月1日に経済産業省が公表した令和9年度予算の概算要求には、CCS関連事業として101億円が要求されています。この101億円には、首都圏CCS事業を含めた国内の「先進的CCS事業」全般への支援に加え、国外でのCO2 貯留適地の調査なども含まれていますが、経産省も事業者も首都圏CCSへの配分額および、同事業の総額は明らかにしていません。経産省はCCS事業の将来性・実現性に関する懸念や、事故・事案の発生(危険性)に関わらず、CCSを重要な脱炭素政策の一つとして位置付けたまま、CCS関連事業への支援を継続する方針であることが明示されたものと言えるでしょう。
CCS技術自体、確立された技術でもなければ、世界での貯留成功例はごくわずかです。今回の事故・事案に関する住民への説明も含めた事業者の対応、要求予算101億円の内訳や先進的CCS事業ごとの支援額を注視しておく必要があります。
追記:首都圏CCSは9月1日にうみとみらい通信号外「燃料油流出の発生と対応状況について」を発行しました。
各団体のプレスリリース
九十九里の海をまもる会
FoE Japan/気候ネットワーク:【プレスリリース】住民および環境団体ら、事故を繰り返す首都圏CCS事業に申し入れと公開質問
気候変動を考える東京湾の会
関連情報
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