「二酸化炭素改修・貯留(CCS)」とは、“Carbon dioxide Capture and Storage”の略で、発電所などから排出される二酸化炭素(CO2)を回収し て地中に封じ込める 技術。 日本政府や電力事業者は、2050年カーボンニュートラルに向けてこの技術に大きな期待を寄せています。しかし、その期待は現実的なのでしょうか。
地球規模での貯留可能性は従来の10分の1
2025年9月3日、学術誌Natureに掲載された研究論文は、CCS可能な場所はこれまで考えられていたよりもはるかに少なく、地球温暖化を食い止める策としては限定的だと報告しました。試算では、地球規模で貯留できる炭素の限界値は約1,460ギガトンCO2(GtCO2)であり、これは従来の推定値約14,000 GtCO2 の10分の1にすぎないと記されています。
国際応用システム分析研究所(International Institute for Applied Systems Analysis)が主導した本研究では、候補地の中から浅すぎる、深すぎる、地震を誘発する、地下水を汚染するリスクが高い、環境保護地区や居住地区に近いといった箇所を除外していったのです。これにより、貯留適地は減り、貯留できるCO2の見込み量も大幅に減少しました。
CCSの温暖化抑制は0.7℃止まり
さらに、今回の論文では、貯留容量の上限までCO2貯留ができたとしても、地球温暖化の抑制効果はわずか0.7℃にとどまると指摘しています。従来の研究ではCCSで約5~6℃抑制できると考えられていたので、大きく評価が見直されたことになります。
しかも、貯留したCO2が漏出する危険性も無視できません。漏出したCO2が地下水の中で炭酸を生成した場合、金属含有鉱物が水中に溶け出し、有害重金属を放出する可能性があり、人体や環境への影響が懸念されます。
CCSはコスト高
日本政府は、2050年時点で年約1.2億〜2.4億トンのCO2を貯留することを目標に掲げています。CCS事業のひとつとして、日本製鉄君津製鉄所(将来的には京葉臨海工業地帯)で発生するCO2を、房総半島を横断する約80 kmのパイプラインを通して千葉県外房沖の海底下に年間約120万トン貯留する「首都圏CCS事業」が計画されています。事業の採算性、合理性に疑問が残り、住民からは反対の声が上がっています。
CCS頼みの排出継続は愚策
そもそも日本にはCCSの適地が限られ、CO2を国外に輸送して貯留するとなれば輸送費や輸送にかかる追加排出の問題も生じます。CCSを口実に火力発電所を使い続けるのは本末転倒です。
論文著者も、CCSは脱炭素化が難しい分野に使われるべきであり、発電所の寿命を延ばしたり、化石燃料の利用を長引かせるために使われるべきではないと述べています。日本政府および電力事業者は、まずはCO2の排出の大幅に削減すべく、火力発電所の段階的廃止を進めるべきでしょう。
Nature掲載の論文:A prudent planetary limit for geologic carbon storage
参考
JBC: 【ニュース】二酸化炭素が房総半島を横断、首都圏CCS事業構想(リンク)
気候変動を考える東京湾の会: 【袖ケ浦】首都圏CCS事業についてのチラシを作成しました!(リンク)
【東京湾の会】白子町での首都圏CCS事業、事業者による説明会の開催について(リンク)