【ニュース】容量市場による新電力への影響に関する調査2024


容量市場による新電力への影響につき、パワーシフト・キャンペーンと朝日新聞社が調査結果を報告

「容量市場」とは、発電される電力量(kWh)ではなく、将来の供給力(kW)を取引する市場のことです。日本では、2020年に初めて実施された容量市場オークションの拠出金の支払いが2024年度からスタートすることとなっていますが、既存の石炭火力発電所にも莫大な資金が流れると指摘されています。

これは、市場で落札された発電所(発電事業者)は、4年後の電力供給能力に応じて、広域機関からお金が分配されるという仕組みです。このお金の原資は小売電気事業者や送配電事業者が支払うことになっており、これを「容量市場拠出金」と呼びます。

パワーシフト・キャンペーンと朝日新聞社は、「容量市場拠出金」を支払うことによって地域新電力はどのように影響を受けることになるのか、調査を行いました。

「容量市場拠出金支払いの現状に関する調査」2024報告書

この調査の設問「3.2) 容量確保のための公平な費用負担となっているか」や「3.4) 地域・再エネを重視する新電力の経営に役立つか」では、「あまりなっていない」「なっていない」が8割弱を占めました。既存の大規模電源を持たない新電力には不利で、大手電力との公平さを欠き、再エネを重視する新電力の経営に役立たないと考える割合が高いことがわかりました。

また、「3.3) 変動型再エネ(太陽光・風力など)の拡大に役立つか」では、約6割が「あまり役立たない」「役立たない」と回答しています。

地域主体の再エネを重視する新電力の経営に悪影響を与える傾向がみられ、再エネを主力化する流れに逆行していることが懸念されます。火力や原発などから地域に根差した再エネへ転換すべく、政府においてはこの調査を真摯に受け止め、あるべき電力システムの在り方を根本から見直すことが求められています。

パワーシフトキャンペーンでは、本調査を踏まえた提言として次のようにまとめています。

  • 省エネ・再エネの促進を電力政策の大前提とすべき。
  • 容量市場では既存の火力・原子力が優遇される状況となっている。
  • 再エネを中心とする電力・エネルギーシステムの大きな転換のために、容量市場自体のあり方について根本から見直すべきである。
  • 地域新電力等の経営負担となり、消費者や地域の再エネ選択が脅かされる状況もふまえ、容量市場の抜本的見直しが必要である。
  • 容量市場の類似制度として長期脱炭素電源オークションも開始されているが、当面大規模な化石燃料発電が支援される方向性には変わりはなく、合わせて見直すべきである。
  • 「容量確保」という考え方自体を見直し、柔軟な需給調整とともに変動型再エネ(太陽光・風力)を大きく導入する必要がある。そのためには、系統の柔軟な運用が重要であり、それを実現する電力システム改革こそ必要である。