私たちが毎月支払う年金保険料。年金保険料のうち一部は積み立てられ、将来の年金給付のために資産運用されています。その額は実に200兆円に上ります。
しかしそんな莫大な金額が、気候変動を悪化させるために運用されているとしたら、皆さんはどう考えるでしょうか?
国際青年環境NGO A SEED JAPANと「環境・持続社会」研究センター(JACSES)は、気候危機から市民を守ることができるような年金の資産運用を求めるために、署名キャンペーンを立ち上げました。
▼署名はこちら
【私たちの「年金」で気候危機を進めないで!温暖化を止めるための運用を求めます。】
年金積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理しており、実際の運用は外部の資産運用会社が行っています。
問題は、この外部の資産運用会社が国民の年金積立金を気候変動を悪化させる方向に運用しているということです。A SEED JAPANは大手資産運用会社16社の気候変動対策のスコアリングを実施しましたが、最高点をとったアセットマネジメントOneでも100点満点中47点と非常に低い結果となりました(GPIFから委託を受けるのは図のオレンジマーカーの企業)。
スコアリングのポイント
- ネットゼロ宣言・排出削減目標の設定や5年ごとの引き上げが行われているか
- 石炭・石油・ガス等に関する事業者への投資を制限・除外する方針があるか
- 石炭・石油・ガスや発電事業者等の多排出セクター・事業者に対して、排出削減目標を設けているか、またエンゲージメントに関する方針はあるか
- 議決権行使基準について、企業に対して気候変動対策の強化に関する具体的な行動を求める文言があるか
- 気候変動対策を求める株主提案に対して賛成する等の議決権行使の方針はあるか

このままでは私たちの年金が気候変動を悪化させる事業のために運用される可能性が高いです。広く国民から多額の年金を預かり、市場での影響力が非常に強いGPIFは、この現状を改善する責任があります。今回の署名で上記2団体は、GPIFに以下のことを求めています。
- 脱炭素・温室効果ガスの削減に真剣に取り組む資産運用会社を選択すること
- 運用会社を選ぶ基準や、運用会社の方針強化に向けたGPIFの取り組みを、市民に分かりやすく公表すること
年金保険料を支払った後の状況は国民からはわかりにくく、また声の届きにくい領域だともいえます。今回の署名キャンペーンはこういった現状を周知し、改めていくためにも必要な動きとなるでしょう。
参考
署名サイト:私たちの「年金」で気候危機を進めないで!温暖化を止めるための運用を求めます。
国際青年環境NGO A SEED JAPAN と「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が、日本の大手資産運用会社16社の気候変動への取り組みについて排出削減目標、化石燃料に関する方針の有無、エンゲージメントや議決権行使に係る方針や実施状況等に関して評価を行った結果についてはこちらを参照↓
A CEED JAPAN, ESGウォッチプロジェクト 【プレスリリース】第2回 日本の資産運用会社16社の気候変動への取り組みランキング発表~気候関連の株主提案に原則賛成する方針を10社が設定するも、賛成率は平均20%と低調

