【ニュース】EU、2040年までに90%削減を法制化


2026年3月5日、EU理事会は、欧州気候法(European climate law)を改正し、2040年までに温室効果ガス排出を90%削減(1990年比)するという目標を採択しました。この目標は、2050年までの気候中立(注)を達成するための重要な中間目標として、法のもとに正式に位置づけられました。これにより目標が拘束力を持つことになります。

(注)人間活動により排出される二酸化炭素だけでなく、メタンなども含めたあらゆる温室効果ガスの総量から、吸収量や削減量を差し引いて実質ゼロにすること。

図:European Commission ”2040 climate target”より

「欧州グリーンディール」の中核をなす欧州気候法は、2021年に採択され、2030年までの55%排出削減が法制化されました。今回の改正によって2040年削減目標が立てられ、気候中立への経路が強化されたことになります。

90%削減という目標達成にあたっては、「高品質な」域外カーボンクレジットの活用が最大5%まで認められていますが、90%削減のうち、少なくとも85%はEU域内で削減する必要があります。

域外カーボンクレジットと排出量取引制度に課題

欧州委員会が域外カーボンクレジットの利用の上限を3%とすることを提案していたところを、5%まで認められた点は、残念ながら当初案より後退した部分となります。

また、今回の改正では、既存の排出量取引制度(EU ETS)を補完する制度として新策定されたEU ETS2(ガソリン車などの道路輸送、化石燃料を暖房に使う建築物などの燃料燃焼によるCO2排出が対象)の本格運用開始日が、当初予定の2027年から2028年に一年延期となりました。こちらも、より早期の運用が目指されるべきでした。

今回の法改正に対し、気候変動に関する欧州科学諮問委員会(ESABCC)は、2040年までに域内の排出量の削減目標が90%に満たない場合は、1.5°C目標に整合しないと述べています。2025年6月には、排出削減目標を90~95%とすることが「2030年以降の政策の確実性をもたらし、電化などのクリーンテクノロジーの導入を促進するとともに、化石燃料輸入の削減によるエネルギー安全保障の強化、そしてEU経済全体におけるイノベーションと投資の加速につながる」とのレポートを発表しました。また、域外カーボンクレジットを利用することについては、「投資が流出するリスクがあり、環境の健全性を損なう恐れがある」として反対の立場を示していました。

また、Climate Action Trackerは今回の改正を受けた声明の中で、EUが2050年までに気候中立を達成させるには、目標をさらに引き上げるとともに、2040年までに域内での90%の削減、理想的には95%削減を目指すべきと提言しています。さらに、域外カーボンクレジットについては「EU域内の化石燃料の段階的廃止を大幅に遅らせる可能性が非常に高い」として、域内の排出削減によって目標を達成できることを目指し、域外クレジットの利用はEU削減目標を上回る削減分に対するもの以外は認めないと述べています。

欧州議会は、委員会に対し、最新の科学的データ、技術の進展およびEUの国際競争力を踏まえ、2年ごとに進捗状況を評価するように求めており、必要に応じてEU気候法の改正案を提案するとしており、施策を強化するための追加処置が含まれる可能性を示唆しています。

日本にとっての注目点

このように、パリ協定との整合を考えると十分ではない目標ではあるものの、90%排出削減という法的拘束力のある目標を立てたことは、日本にとって注目に値します。

現時点の日本の2040年の削減目標は73%(2013年度比)ですが、先述のClimate Action Trackerは、日本は2035年時点で81%の温室効果ガス排出削減を目指すべきだと提言しています。2040年の目標は、当然それを上回る、野心的なものでなくてはいけません。また、日本は国際カーボンクレジットの使用については規制がなく、野放しになっています。これについても、早期に厳格な制限をつけるべきでしょう。さらに、削減目標に対し科学的に求められる水準をはっきりと示すことのできる、欧州科学諮問委員会のような第三者による評価機関の重要性も改めて感じさせました。

EUの例を参考にしながら、日本も科学的な排出削減目標を立てるための施策を打ち出すべき時です。

参考