2024年5月31日、英国のシンクタンクE3Gが、主要7カ国首脳会議(G7)の電力システムの脱炭素に向けた取り組みを評価する『G7電力システム・スコアカード 2024年版(G7 Power Systems Scorecard)』を発表しました。この報告書には、G7諸国が2035年までの電力部門の脱炭素化を達成するために前進しているにも関わらず、日本だけは今だ化石燃料に固執し、特にガス火力への依存を高めている結果、供給リスクを抱えたままの状況となっているとの指摘が記されています。
ガス火力への依存
日本を除くすべてのG7諸国は、遅くとも2030年までに石炭を段階的に廃止する方針を固めているか、ドイツと米国のように脱石炭に向けて大きな一歩を踏み出しています。 しかし本報告書は、ガス、特に排出削減を講じていない(Unabated)ガス火力を段階的に廃止するための各国の政策や目標には、大きな隔たりがあることを明らかにしています。
現在および将来におけるガス火力発電への依存は、CCS(二酸化炭素回収・貯留)および水素ガスに対応した(H2 ready)ガス発電といった、現時点では商業利用が確立できていない技術への高い依存を前提としており、火力発電以外の柔軟性のある技術の開発と普及を妨げる可能性があることが懸念されています。
不十分な再エネの拡大
国際合意では再生可能エネルギ―(再エネ)の拡大目標が掲げられ、各国の方針でも優先事項として挙げられてはいるものの、各国の再エネ発電の導入計画は、発電部門の2035年ネットゼロを達成するための経路として必要な量に届いていません。再エネ以外(米国や日本での原子力発電など)を低炭素電源と位置付けている国も含め、ほとんどのG7諸国において電力部門の2035年ネットゼロの達成が危ぶまれる状況です。
日本の状況
日本は、石炭火力およびガス火力のいずれについても段階的廃止計画がない上に、再生可能エネルギーの拡大目標も控えめであり、他国から大きく遅れをとっています。報告書には、日本のエネルギー転換戦略が他のG7諸国と著しく異なっており、アンモニアや水素の混焼といった化石燃料をベースとする技術の拡大に重点を置いているため、国内およびアジア地域の脱炭素化の取り組みを妨げる危険性があると記されています。
本報告書は、ガス火力に過度に依存し続けることは、脱炭素社会への移行を牽引するリーダーとしてのG7諸国の国際的なイメージや、気候変動に関する国際合意に対する信頼性を脅かすものとなると指摘した上で、目標を達成するためには、送電網の迅速な配備に加え、再エネと蓄電池の利用を促進する市場メカニズム、効率化対策、電化率の向上(特に建物と交通機関)が不可欠であるとまとめています。
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E3G Press Release: Delivery of G7 net-zero power target at risk unless the group accelerates action
G7 Power Systems Scorecard (レポート)
作成・発行:E3G
発行:2024年5月31日