【レポート】化石燃料ファイナンス報告書2025 – 化石燃料ファイナンスが激増


米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)をはじめとするNGOは、6月17日(米国東部時間)に『化石燃料ファイナンス報告書2025〜気候カオスをもたらす銀行業務〜(原題:Banking on Climate Chaos, BOCC)』を発表しました。

本書は、世界の主要民間銀行65行による2,800社以上の化石燃料企業への融資・引受をまとめた包括的な年次報告書です。気候変動による被害への銀行の寄与度を評価・分析した今回の調査結果からは、過去数年にわたり「ネットゼロ」やその他の気候変動対策に関する政策が採用されているにもかかわらず、グローバルな銀行は多くの気候変動関連公約を後退させ、2024年に銀行から化石燃料産業に提供された資金は8,694億ドルに達することが明らかになりました。この額は、2023年と比べると1,625億ドル(23%)増加したことになります。新規の化石燃料インフラ(パイプラインなど)、輸送タンカー、油田も含めたあらゆる新規の化石燃料供給源は必要ないにもかかわらず、銀行は依然として、地球に害を及ぼす化石燃料事業の拡大と、それらの事業に関与する企業への投資を続けています。

2024年の主な調査結果

  • 世界の最大手銀行65行は、化石燃料関連事業を展開する企業に対して行った資金提供(融資・引き受け)は、総額8,690億ドルにのぼる。
  • 世界の最大手銀行65行は、化石燃料の生産拡大を進める企業に対して行った資金提供は、総額4,290億米ドルにのぼる。
  • 本報告書の調査対象である65行の3分の2強にあたる45行が、2023年から2024年にかけて化石燃料への資金提供を増やしていた。
  • 本報告書の調査対象である65行中48行が、2023年から2024年にかけて化石燃料拡大企業への資金提供を増やしていた。
  • 気候変動緩和政策を後退させた銀行が増えたことが、化石燃料融資の増加に寄与したものと推測される。
  • 65行は、パリ協定が採択された2016年以降にも化石燃料への資金提供を続け、2024年までの9年間に銀行から化石燃料産業に提供された資金は総額7.9兆ドルとなっている。
  • 2021年から2024年までの、世界の銀行による化石燃料事業を拡大している企業(化石燃料拡大企業)への提供額は1.6兆ドルだった。2024年単年では総額4,286億ドルが該当企業に提供されており、2023年比で848憶ドルの増加となっていた。
出典:Banking On Climate Choos info pack.(数字は2021年~20204年の合計金額)

本報告書から、特定の国や地域が、世界的な化石燃料金融において重要な役割を果たしていることが明確になっています。2024年も、対象期間中の「化石燃料全部門」への資金提供のワースト12行(Dirty Dozen)には、北米(米国とカナダ)と日本のメガバンクがランクインしており、ワースト12行のうち、日米の銀行が合わせて9行を占めていました。日本の3メガバンクはワースト12行の常連となっていますが、2024年は、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)が昨年から順位をあげて世界4位(約403億ドル)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が6位(約381億ドル)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が11位(約279億ドル)に名を連ねています。3行からの2024年単年の化石燃料企業への拠出合計は1,063億ドル、65行中3行だけで全体の融資額のうち12%を占めています。しかも、その半数近くが米国に本社を置く化石燃料企業に提供されており、日本のメガバンクからの融資が米国のエネルギー産業、特にLNG事業において重要な役割を担っていることを示しています。

出典:RAN『化石燃料ファイナンス報告書2025』参考資料 日本の3メガバンクの資金提供分析より

気候変動の影響が年々深刻化する中、銀行から化石燃料への資金提供が減少するどころか増加していることが明らかになりました。特にLNG輸出入ターミナルや関連するインフラ施設の開発に資金が提供されていることが見て取れます。また2024年は、2050年までに銀行の投融資ポートフォリオの温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにすることを目指すNet-Zero Banking Alliance(NZBA)からの脱退が話題となりました。2024年末から米大手銀行の脱退が相次いだことに続き、2025年3月には日本の3メガバンクが揃って脱退しています。本報告書に収録された米国、カナダ、日本の銀行の多くが同盟から離脱しており、本報告書発行時点では、本報告書に収録された銀行のうちNZBAに残っているのは半数未満(30行)となっています。しかも、今年4月に公表したNZBAガイドライン(第3版)では、目標を1.5℃から「2℃を大幅に下回る」に緩和しています。これでは、特に島嶼国のような気候変動に脆弱な国や地域で、より多くの被害が生じることになりかねません。

こうした状況を踏まえ、本報告書の執筆者らは、もはや銀行の自発的な行動には頼れないとし、金融機関の監督当局、機関、政策立案者が、パリ協定の約束を履行するために規制措置を強化し、金融機関の活動を気候目標と一致させるための処置を講じる必要があると述べています。

日本のメガバンクが、化石燃料融資および化石燃料拡大企業への融資のいずれにおいても世界的に見ても巨額の資金提供を継続し、それらの事業を支えていることに注視し、年々拡大する気候変動の被害から地域社会および経済を守る責任を果たすことを求めていかなければなりません。

BankTrack PR :  Banks fossil fuel finance totals $869 billion in 2024, a dramatic increase in financing
レポートおよび関連データの特設サイト:Banking on Climate Chaos, Fossil fuel Finance Report 2025
Report (PDF)

【執筆団体】 レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN/調査を主導)、以下のパートナー団体:バンクトラック、ウルゲワルド、先住民環境ネットワーク(IEN)、エネルギー・エコロジー・開発センター(CEED)、シエラ・クラブ、リクレイム・ファイナンス

化石燃料への資金提供データ、政策スコアといったデータセットは特設ページ(bankingonclimatechaos.org)からダウンロードが可能です。

関連情報

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
共同プレスリリース「化石燃料ファイナンス報告書 2025」発表 〜世界65銀行の化石燃料への資金提供額、2024年は8,694億ドルに急増〜 (リンク
『気候カオスをもたらす銀行業務: 化石燃料ファイナンス報告書2025』要約版(PDF
『化石燃料ファイナンス報告書2025』参考資料 日本の3メガバンクの資金提供分析(PDF

作成・発行:Rainforest Action Networkほか
発行:2025年6月17日