米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)をはじめとするNGOは、5月13日(米国東海岸時間)に『化石燃料ファイナンス報告書2024〜気候カオスをもたらす銀行業務〜(原題:Banking on Climate Chaos)』を発表しました。
今年で15版となる本書は、世界の主要民間銀行60行による4,200社以上の化石燃料産業への融資・引受をまとめた包括的な調査報告書です。2016年から2023年を対象期間として、化石燃料産業全体、部門別、化石燃料拡大企業への資金提供ごとに集計・分析を行っています。その分析の結果、パリ協定採択後の2016年から2023年の8年間に銀行から化石燃料産業に提供された資金は約6.9兆米ドル。このうちの約半分の約3.3兆ドルは、化石燃料事業の拡大のために投入されたことが明らかになりました。2023年単年の化石燃料産業全体への提供額は約7,050億ドルで、化石燃料拡大企業への提供額は約3,470億ドルとなっています。
対象期間中の「化石燃料全部門」への資金提供のワースト12(Dirty Dozen)には、日本の3メガバンクが揃って名前を連ねており、その順位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が4位(約3,077億ドル)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)が昨年から順位をあげて6位(約2,725億ドル)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が9位(約2,122億ドル)となっていました。この「化石燃料全部門」への資金提供額では、米銀と日本のメガバンクが上位を独占している状況です。
さらに、日本の3メガバンクは、2023年単年の化石燃料全部門への融資・引受額でもワースト10に入っており、2位(約370億)のみずほを筆頭に、MUFG(4位)、SMBC(8位)と続いています。
「化石燃料拡大企業」への資金提供を見ても、みずほが2位(約188億ドル)、MUFG(約154億ドル)が3位。「メタンガス(LNG:液化天然ガス)」への資金提供では、みずほが1位(約109億ドル)、MUFG(約84億ドル)が2位と上位を独占しており、化石燃料関連事業に対して日本のメガバンクが世界的に見ても巨額の資金提供を行っており、そうした事業を支えていることが見て取れます。
気候変動の影響が年々深刻化する中、この報告書は銀行から化石燃料への資金提供が十分な速さで減少していないことを明らかにしています。実際、2023年の化石燃料の各部門での資金提供は増加しており、ガス輸出入ターミナルと関連インフラ施設を開発する企業への資金提供が大幅に増加していることが示されています。
ネットゼロを目指すと公言している銀行は、実質的な脱炭素社会への移行を妨げるような事業や化石燃料関連事業を推し進める企業への資金提供を見直し、公正な移行に向けた政策転換を急ぐべきです。
レポートおよび関連データのダウンロード:Banking on Climate Chaos (BOCC)
補足
化石燃料への資金提供データ、政策スコアといったデータセットはbankingonclimatechaos.orgからダウンロードが可能です。
また、今回の報告書のリリースにおけるフロントライン・ストーリー(最前線からのレポート)として、神戸石炭火力発電所の建設、運転開始と戦っている地域グループのか活動が取り上げられています。こちらもご参照ください。
関連サイト
日本語PR:共同プレスリリース「化石燃料ファイナンス報告書 2024」発表〜世界60銀行、パリ協定以降に6.9兆ドルを提供 米3行に続き三菱UFJが4位
英語PR:Banks financed fossil fuels by $6.9 trillion dollars since the Paris Agreement; $705 billion provided in 2023 alone; JP Morgan Chase, Mizuho, and Bank of America are worst 3 funders
「神戸の石炭火力発電を考える会」ウェブサイト(日本語)
作成・発行:Rainforest Action Networkほか
発行:2024年5月13日