【レポート】世界の平均気温が初めて産業革命前より1.5℃以上高い気温に


世界各地で気候変動の影響による異常気象が頻発している中、世界気象機関(WMO)や欧州連合(EU)の気象情報機関 コペルニクス気候変動サービス(C3S)が、2024年の平均気温は、産業革命前のレベルと比べ、パリ協定が目標としている1.5℃を初めて超えたと発表しました。2023年に続き、2024年も記録を更新する年となったことが、データから明らかになっています。

WMO報告:2024年は産業革命以前を約1.55℃上回る記録的に暖かい1年だった

WMOによると、6つのデータセットー欧州中期予報センター(ECMWF)/日本の気象庁/米国空宇宙局(NASA)/米国海洋大気庁(NOAA)/英国気象庁とイースト・アングリア大学気候研究ユニット(HadCRUT*)との共同研究/Berkeley Earthーを分析した結果、世界の平均気温は1850~1900年の平均を1.55℃(不確かさのマージンは±0.13℃)上回っていたことが判明しました。

*HadCRUT(Hadley Centre/Climatic Research Unit Temperature):英国気象庁ハドレー・センターとイースト・アングリア大学の気候研究ユニットの共同成果として示されている世界の過去の地表面温度偏差のグリッドデータセット

出典:WMO、1850-2024年の世界の気温の推移

重要なメッセージ

  • 2015~2024年までの過去10年間は、記録上最も温暖な10年間となった。
  • 2024年は世界の平均気温が1850~1900年の平均気温を1.5℃以上上回った初めての年であったと見られる。
  • WMOが世界的な数字を導き出すために、6つの国際的なデータセットが利用された。
  • 2024年には、異常な陸および海面温度、さらに異常な海洋熱が観測された。
  • パリ協定の長期気温目標はまだ生きているが、重大な危機に瀕している。

高温となった主な理由は、人間が温室効果ガスをいまだに排出し続けていることにあると指摘しています。壊滅的な気候は、異常気象を加速させるだけでなく海水面の上昇や氷の融解を招くことにもなり、対策をするために残された時間は少ないと警告しています。

WMO confirms 2024 as warmest year on record at about 1.55°C above pre-industrial level(WMO

C3S報告:2024年は産業革命前より1.5℃上昇した初めての年となった

コペルニクス気候変動サービス(C3S)も、2024年は1850年まで遡る世界の記録の中で最も暖かい年であり、世界の平均気温15.10℃は、1991~2020年の平均気温を0.72℃上回り、過去最も暖かかった2023年を0.12℃上回ったと報告しました。気候変動によって、地球の気温が経験したことのない水準にまで上昇していると警笛を鳴らしています。

重要なメッセージ

  • ERA5(第5世代大気再解析)によると、2024年の世界の平均気温は15.10℃となり、1991~2020年の平均を0.72℃上回り、過去最も暖かかった2023年を0.12℃上回った。 これは、産業革命前とされる1850~1900年の気温を1.60℃上回ったことに相当する。
  • 2024年は、産業革命前の水準を1.5℃以上上回った最初の年となった。
  • 過去10年間(2015~2024年)のそれぞれの年は、史上最も温かい10年となっている。
  • 2024年は、世界平均の月次気温が産業革命以前のレベルを1.5℃上回った期間が11か月に及んだ。さらに言えば、2023年7月以降、2024年7月を除く全ての月が1.5℃を上回っている。
  • 2024年7月22日、日中の世界平均気温が17.16℃の過去最高を記録した。
  • 2024年は、南極大陸とAustralasia(オーストラリア大陸、ニュージーランド、ニューギニア島およびその近海の諸島)を除くすべての大陸、および海洋の大部分(特に北大西洋、インド洋、西太平洋)で最も暖かい年であった。
  • 2024年は3つの暖かさを記録することとなった。北半球の冬(2023年12月~2024年2月)と北半球の春(3~5月)および夏(6~8月)の3つの季節での気温は、1991~2020年の平均気温に比べてそれぞれ0.78℃、0.68℃、0.69℃上回っていた。
  • 2024年1月から6月までの各月は、前年同月の記録を上回っていた。 8月を除く7月から12月までの各月は、2023年に次いで2番目に高い気温を記録している。2024年8月は、2023年8月に並ぶ記録的な暖かさだった。
出典:C3S、世界の表面温度の上昇推移

コペルニクス気候変動サービスは、気温とともに海水温の変化も見ていますが、2024年、極域以外の海洋の年間平均海面水温は20.87℃と過去最高を記録し、1991~2020年の平均を0.51℃上回っていました。2024年1~6月の海面水温は、2023 年後半に続き、過去最高を記録しています。海面水温の上昇の一因は、エルニーニョ南方振動(ENSO)にあると指摘されていますが、エルニーニョ現象の終息後も多くの海域で海水温が高い状況が続きました。2024年の大半の時期において、南極周辺の海氷面積は史上最低値に達し、北極圏でも海氷面積は、7 月までは 1991年~2020年の平均値に近かったものの、その後は平年を大きく下回ることとなっています。

Copernicus: 2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level(C3S)

さらに、米航空宇宙局(NASA)も独自分析の結果、2024年の地球の平均気温は、1880年の観測開始以来、過去最高だったと発表しています。数字に多少の差はあるものの、いずれの機関による発表も、2024年が観測記録上で最も温かい年だったことは明らかであり、温暖化が進めば進むほど、気候への影響が悪化することになります。

WMOのセレステ・サウロ事務局長は、「単年で1.5℃を超えたからといって、パリ協定の長期気温目標を達成できなかったことにはならない。」としつつ、「しかし、わずかな気温上昇も問題であることを認識することが重要であり、気温上昇が1.5℃以下であろうと、1.5℃以上であろうと、温暖化が進むごとに、私たちの生活や経済、そして地球への影響は増大する。」と述べています。

関連リンク

WMOプレスリリース:WMO confirms 2024 as warmest year on record at about 1.55°C above pre-industrial level
C3Sプレスリリース:Copernicus: 2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level
NASA:Temperatures Rising: NASA Confirms 2024 Warmest Year on Record

作成・発行:世界気象機関(WMO)
発行:2025年1月10日

作成・発行:コペルニクス気候変動サービス
発行:2025年1月10日