2018年3月20日、東京都は、都が約15億円を拠出した官民インフラファンドのひとつ、「IDIインフラストラクチャーズ」が、福岡県北九州市における響灘火力発電所に対して投融資を実行したと発表しました。
響灘火力発電所は、石炭と木質バイオマスを燃料とする11.2万kWの発電所新設計画です。2016年に北九州市の条例に基づく環境アセスメントの手続きが終了し、同年10月に着工、2019年2月に運転を開始する予定となっています。環境アセスメントの準備書によればCO2排出量は年間58.4万tにものぼり、さらにSOxやNOx、PM2.5などによる大気汚染物質の健康影響も懸念されます。
東京都は、世界初となる都市型キャップアンドトレード型排出量取引制度を創設して賞賛を浴び、C40(世界大都市機構先導グループ)にも参加して気候変動対策に取り組む姿勢をあきらかにしてます。しかし今回の投融資は、気候変動対策に逆行し、これまでの都の方針とは辻褄が合いません。
さらに驚くべきことに、響灘火力発電所への投融資は、公表の約3年半前である2014年9月に実行済みであることが新たにわかりました。これは、3月の都の発表を受けて環境NGO気候ネットワークが都知事に宛てて送付した書面への返信に記されていたものです。公表のタイミングについて都は「本年に入り平成31年2月運転の目途がつきましたことから、本年3月20日の発表となった」としていますが、本来は投融資を実行した際に速やかに公表するべきです。
返信では、「ファンドの仕組みやファンド契約上、現時点での投融資からの撤退は困難な状況」と続けています。しかし、世界では石炭火力発電への投融資から撤退する「ダイベストメント」の動きが活発になり、その流れはニューヨーク市などのように自治体にも及んでいます。東京都には、石炭火力発電の問題を認識し、ダイベストメントの方針を定めることが求められます。