東京電力が、2020年から運転開始予定の2基の新規石炭火力発電所の環境配慮書を5月16日に公開し、6月16日(必着)までの1か月間、意見募集を行っている。一か所は、福島県いわき市に建設予定の50万kWの勿来(なこそ)発電所、もう1か所は福島県双葉郡に建設予定の50万kWの広野発電所。いずれも、IGCC(石炭ガス化複合発電)を採用した最高効率な発電所だという。IGCCについては、常磐常陸共同火力10号機(25万kW)が、日本第1号として2013年4月から運転開始をしているが、50万kWという規模は初めてであることから、今回の2基は「実証計画」と位置付けられ、入札対象から外れ、福島復興予算も入っている。
それぞれの「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備の実証計画 計画段階環境配慮書」をひもとくと、驚くことに、CO2に関してはほとんど記載がない。なぜなら、最新鋭のIGCCを採用するから、従来方式(汽力)に比べ「発電電力量当たりの二酸化炭素排出量を15%程度低減」し、CO2については「重大な影響を回避・低減することが可能」だから「配慮事項として選定しない」(第4.1-3表(2))のだという。2020年か30~40年運転し、排出し続けるCO2は検討しないということらしい。
IGCCの48%の熱効率は、確かに現状の石炭汽力発電(USCでも)の熱効率42%より高いが、それでもCO2排出の原単位としては約700g-CO2/kWhと思われる。他の燃料種と比較すると大量に放出する。例えば、東電の川崎火力発電所(燃料:LNG、2009年稼働の1号系列)の熱効率は58.6%でありCO2排出量は、350g-CO2/kWhを切るほどで、どのような高効率化したにせよも、石炭のCO2排出は比較にならないほど膨大だ。そして当然「新設」だから、追加的な排出だ。これを検討しない、ということは、問題認識として問題だ。
東京電力管内では、原発停止によるCO2排出増加が強調されるが、2003年12月運転開始の常陸那珂・石炭火力1号機(100万kW)、2004年7月運転開始の広野・石炭火力5号機(60万kW)がCO2排出を増やすことに寄与している影響も大きいと考えられる。短期の経済合理性を追求するばかりで、「安い」燃料の石炭を優先的に使用していく方針では、東電管内のCO2排出量は改善するはずがないしようもない。アセスメントのプロセスでは、CO2排出影響についてもきちんと評価することが必要だろう。
出典:
「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備の実証計画(広野)計画段階環境配慮書の公表について」2014.5.16
http://www.tepco.co.jp/csr/hirono/assessment/index-j.html
「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備の実証計画(勿来)計画段階環境配慮書の公表について」2014.5.16
http://www.tepco.co.jp/csr/nakoso/index-j.html