もう1年以上の前の話ですが、2014年9月26日の日経新聞に「関電が仙台に火力発電所 域外に初、首都圏へ攻勢 17年秋運転目指す」との記事が発表されて、私たち一般市民にはじめて仙台港付近での石炭火力発電所の建設計画の存在が知られるところとなりました。
このときの記事では、次のように書かれています。
「伊藤忠エネクスは仙台港に石炭火力発電所を建設する計画で、15年秋に着工する。関電の全額出資子会社で新電力の関電エネルギーソリューション(大阪市)と伊藤忠エネクスの子会社が折半出資で特別目的会社(SPC)「仙台パワーステーション」を設立し、同発電所の建設を担う。
発電所の出力は11.2万キロワットで事業費は約300億円。17年秋の運転開始を目指す。関電は発電した電力を首都圏を含む東日本の企業や家庭に、伊藤忠エネクスは企業向けに販売する計画だ。」
しかし、事業者からの公式な発表は15年秋を迎えた今も何もありません。発電所の設備容量は11.2万kWと環境アセス法の裾きり値以下なので、国の環境アセスの対象外です。また、宮城県や仙台市などの環境アセス条例の対象にもなっていないため、何もわからない状況が続いています。
住民に対する説明会を要請したものの、事業者の回答は「説明会の必要はない」と。
本石炭火力発電所の建設計画は、仙台の人たちにとって、なぜ関西電力や伊藤忠商事が東北にやってきて、首都圏用の電気をつくるのか、石炭火力発電所のような持続不可能な方法を今から選ぼうとするのか、環境や健康に影響がないと言えるのか、など様々な疑問や不安があがっています。また、気候変動への影響についても一切の情報がありません。
そのため、気候ネットワークほか地元で再生可能エネルギーの普及に取り組む方たちなどは、気候ネットワークを中心として8月中旬に事業者である関電エネルギーソリューション、伊藤忠エネクス、仙台パワーステーションの3社の代表に、以下のような「地元説明会の開催のお願い」という書面を提出しました。
「8月に提出した地元説明会の開催のお願い」
株式会社関電エネルギーソリューション 代表取締役社長 白井良平様
伊藤忠エネクス株式会社 代表取締役社長 岡田賢二様
仙台パワーステーション株式会社 代表取締役副社長 尾﨑信介様
拝啓 残暑厳しき折、貴殿に置かれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
報道では、特別目的会社「仙台パワーステーション」(関電エネルギーソリューションと伊藤忠エネクスによる出資)により、仙台港付近に11.2万kWの石炭火力発電所の建設計画について、があると伝えられています。
本事業は、発電所の環境アセスメントの対象外の小規模な発電所であるため、計画については報道で伝えられている以上の十分な情報を知ることができません。またこの先も、「市民が、本事業についてなんら情報を得られないままに、発電所が建設され、運転されていくことは、望ましいものではないのではないかと考えております。
しかも、石炭火力発電所は、二酸化炭素や大気汚染物質、重金属などを排出すると言われています。新規石炭火力発電所の建設計画では10月にも着工が始まると伝えられていますが、「仙台市内における新規の発電所の建設について、環境や健康にどのような影響があるのかについて知りたい」と考えています。そのため、建設に着手される前に、事業者の皆様にご説明いただけないかと思っております。
つきましては、着工前に、仙台市内において説明会の開催を要請したく、ここに書面にてお願い申し上げます。ご多忙中のところを恐縮に存じますが、ご返事賜りたくお待ちしております。
以上
*詳細はこちらのサイトへ。
しかし、この依頼書を送って数週間、全く連絡をいただくことができなかったため、こちらから問い合わせの電話をかけたところ、関電エネルギーソリューション、伊藤忠エネクス、仙台パワーステーションの3社とも、「行政上必要な手続きをとっているので、住民の説明会など開催する予定はない」との回答でした。また、10月に着工するのかどうかを尋ねたところ、「個別案件にはお応えできない」とこちらもまた誠意のない回答でした。結局、事業者は法律の範囲でしか動かず、自主的に説明会を持つことも、アセスをすることも全く期待できないことがわかりました。
このまま見過ごされて建設されていいのでしょうか。このような実態をみるにつけ、やはり小規模火力発電所も必ずアセスの対象にすることが必要だと思われます。