【報告書公開】G20諸国の石炭火力発電所への支援が2倍以上に


新報告書:G20諸国の石炭火力発電所への支援が2倍以上に
G20議長国・日本は世界最大規模の公的資金を石炭火力発電に投入

日本が国外の石炭火力発電所に対し、世界最大規模の公的資金を投入し続けていることを示す、新しい報告書が発表されます。報告書では、日本の公的金融機関は、石炭採掘、石炭火力発電、石炭火力発電技術輸出に関し、年に52億ドルの資金を国際的に提供していることを明らかにしています。

報告書では、石炭への総投資額が歴史的な減少を見せているにもかかわらず、石炭火力発電所の建設と維持の支援に対するG20諸国政府の年平均支出額は、2014年の170億ドルから2017年には480億ドルへと、2倍以上に増えたことが明らかにされています。G20が10年前に、すべての化石燃料への補助金を段階的に廃止し、壊滅的な気候変動の防止に一役買うことを約束したにもかかわらず、このような増加が起きているのです。そして、G20諸国による石炭火力発電所への公的支援の大幅な増加に、日本の石炭への融資が大きな一翼を担っています。

日本が石炭への支援を続けていることは、昨年9月に安倍晋三首相が英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿して、世界から注目を浴びたこととはまるで相容れません。寄稿の中で首相は、日本が気候変動問題においてリードする姿勢を示し、世界のリーダーたちに「地球を救うために日本とともに行動しよう」と呼びかけました。これを受けて、安倍首相がG20議長国として大胆な気候変動対策を実施するのではないかと期待が高まりました。しかし、6月28~29日のG20大阪サミットの開催が迫る中、世界を牽引するような行動がとられる可能性はほぼなくなりつつあります。

『G20の石炭補助金:斜陽産業への政府支援を追跡する』(“G20 coal subsidies: Tracking government support to a fading industry”)は、海外開発研究所(ODI)、オイル・チェンジ・インターナショナル(OCI)、国際持続可能な開発研究所(IISD)、自然資源防衛協議会(NRDC)の新たな調査結果をまとめた報告書で、石炭の採掘・火力発電・消費に対するG20諸国の政府補助金を初めて追跡しています。
日本の公的金融機関、特に国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)は今も、石炭火力発電所に対する世界最大規模の公的融資機関に名を連ねています。
日本はG7で唯一、計画中の石炭火力発電所事業が多数存在する国です。2012年以降、50基の新規石炭火力発電所の計画が発表されています。このうち、容量約700万kW相当の13基は主に地元の反対と経済的な理由により中止されましたが、230万kWに相当する13基が既に稼働し、1400万kWの24基が現在計画中または建設中の段階にあります。
日本政府は石炭火力発電や石炭火力発電技術輸出への支援を続けていますが、その一方で、日本の銀行や企業は石炭開発に関連したリスクを認識し始めています。近年、いくつかの商社、企業、銀行が石炭火力から撤退することを発表しました。
G20諸国のいくつかは近年、石炭から手を引く重要な一歩を踏み出しています。脱石炭連盟(PPCA)をともに創設した英国とカナダがその例です。しかし、今回の報告書ではっきりと統計が示しているのは、G20諸国が石炭への補助金を廃止するという約束を果たすにはほど遠いということ、そして気候の危機の主要因である時代遅れの汚い発電システムのさらなる固定化という危険を冒しているということです。

気候ネットワークの国際ディレクター平田仁子は、「日本は、汚染源となる時代遅れの技術に何十億ドルもの資金を注ぎ込んでおり、気候の破壊を避けようとする世界的な行動を台無しにしています。安倍首相はG20議長国となるのを機に、石炭への融資をやめると発表して日本の石炭火力発電を速やかに段階的に廃止していく計画を示すべきです」と述べています。

また、OCIのシニア・キャンペーナーであるスザンヌ・ウォン(Susanne Wong)は、「日本が石炭融資を続けることに国際社会から反対の声が高まっています。もし安倍首相がG20のプラットフォームを使って、気候問題で真のリーダーシップを示し石炭からの脱却を表明することができなければ、来年の東京オリンピックに向けて準備を進める日本へ、国際的な圧力が高まり続けることになりそうです」と話しています。

参考

● 報告書『G20の石炭補助金:斜陽産業への政府支援を追跡する』は、英国標準時6月25日(火)00:01公開(日本時間同日08:00)となりました。(G20 coal subsidies: tracking government support to a fading industry
● 石炭火力発電への支援が増加したというのは、2013~2014年の年平均支援額と2016~2017年の平均との比較を基にしています。
● 国際エネルギー機関(IEA)の報告書『世界エネルギー投資2019』によると、新規石炭火力発電所への総投資額は2015年から2018年までの間に75%減少しました。
● IEAの『世界のエネルギーと二酸化炭素の状況レポート2019』によると、石炭火力発電は2018年の二酸化炭素(CO2)排出量の増加をもたらした唯一最大の要因でした。
● G20は2009年以降毎年、化石燃料への補助金の段階的な廃止を約束しています。

リンク情報・PDFダウンロード

プレスリリース:
新報告書:G20諸国の石炭火力発電所への支援が2倍以上に G20議長国・日本は世界最大規模の公的資金を石炭火力発電に投入(日本語PDF)
G20 support to coal power plants increases by more than double – new report(英語PDF)

リンク:
G20 coal subsidies: tracking government support to a fading industry(英語リンク
Japan’s public finance institutions are still among the world’s largest providers for coal-fired power plants(英語リンク

レポート:
G20 coal subsidies Tracking government support to a fading industry(英語フルレポートPDF、52 ページ)
Japan’s public finance institutions are still among the world’s largest providers for coal-fired power plants(英語 日本語スタディPDF、2 ページ)

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