2013年11月、日本を含む世界各国の指導者と専門家がワルシャワで開かれたCOP19に出席する中、ポーランド政府は、大手石炭会社や政策立案者らが集まる、石炭と温暖化との関係を議論する世界石炭協会(WCA)主催の「国際石炭・気候サミット」を開催しました。
WCAは、「ワルシャワ・コミュニケ」と題された呼びかけの中で、石炭火力発電所からの温室効果ガス排出量を減らすため、「高効率・低排出の石炭燃焼技術の即時利用」を求めました。
このWCAの主張に対して、11月18日、14カ国27人の科学者(国立環境研究所の西岡秀三博士と甲斐沼美紀子博士を含む)が、「高効率」石炭は地球温暖化対策だという主張を否定する共同声明を発表しました。
「これ以上むき出しの石炭を使うなら、気温上昇を2°C未満にすることはできない」と題された共同声明において、CCS(二酸化炭素隔離貯留)技術を利用しない石炭火力発電を続ければ、気温上昇を工業化以前と比べて2℃未満に抑える目標を達成することはできなくなると警告しました。
また、最高効率を誇る石炭火力発電所でさえ、再生可能エネルギーと比べると15倍ほどの二酸化炭素を排出し、むき出しの石炭は「低炭素」ではないとも強調しています。温室効果ガス排出量の危機的な増加を抑制するためには、化石燃料を掘り起こさず、今すぐに石炭の利用を止めなければなりません。
このまま行けば2100年までに気温が4°Cも上昇し、過酷な気候になると警告しています。世銀、欧州投資銀行や米国輸出入銀行などの大手金融機関は、石炭の利用を制限すると約束しましたが、科学者はさらなるアクションが必要だと唱えています。
IPCC第一作業部会の前共同議長であるバート・メッツ氏は、「石炭火力発電所は40~50年間操業することが可能だが、私たちはこの期間中にこそ排出量を減らさなければならない」、「石炭を利用していては実現不可能だ」と指摘しています。
この問題は、まさに日本に当てはまる問題です。11月15日には、京都議定書の第一約束期間における目標から大幅に後退した、2020年までに「05年比3.8%減」という弱い目標を発表しましたが、片方で、温暖化対策として石炭をクリーンコールとして推進しているためです。さらに、国際協力銀行などの日本の金融機関は、世界中の石炭火力発電所に関するプロジェクトにも資金供与し続けています。日本も、今回の科学者らからの石炭に関する声明に耳を傾け、2°C未満目標を達成できるよう、より積極的な方針に転換することが必要です。
*石炭はCCS技術を利用せずに燃やした場合、”unabated”と呼ばれ、ここでは「むきだしの」石炭と翻訳しています。
関係リンク:
欧州気候財団:「科学者達が、『高効率』石炭に関する石炭産業の虚偽を暴く:むき出しの石炭を使う余地はない”、2013年11月18日
http://www.europeanclimate.org/en/news/ecf-press-release-scientist-statement
欧州気候財団:”これ以上むき出しの石炭を使うなら、温度上昇を2°C未満にすることはできない:主要な気候・エネルギー科学者らの声明”、2013年11月18日
http://www.europeanclimate.org/documents/nocoal2c.pdf
世界石炭協会:”アクションを求める呼びかけ、ワルシャワ・コミュニケを開始“、2013年9月17日
http://www.worldcoal.org/extract/wca-launches-the-warsaw-communique-call-to-action-2-2698/