今年8月から、経済産業省は総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を再開した。ここで3年に1度のエネルギー基本計画見直しの議論がされている。
現在のエネルギー基本計画は、東日本大震災後の2014年に改訂されたもので、原子力や石炭を日本の「重要なベースロード電源」と位置づけており、その翌年に定められた「2030年の電源構成(エネルギーミックス)」では、原子力22~20%、再エネ22〜24%、天然ガス27%、石炭26%とした。今、このエネルギー基本計画に基づき、石炭火力発電の建設計画ラッシュという、世界の潮流とは全く逆行する方向へと突き進んでいる。
今回の基本政策分科会の委員構成は、「原発ゼロ」をかねてから主張している消費生活アドバイザーの辰巳委員を除き、大半が「原発推進/容認派」で占められている。石炭に対しても懸念の声はあがらない。8月9日の基本政策分科会に出席した世耕経済産業大臣は、会議冒頭でエネルギー基本計画の大きな方向性を変えるつもりはないことを明言した。
<http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/021/>
しかし、このままでは、世界が原発・化石燃料から脱却して再エネ100%を目指そうという時代に、国民の意思を無視し、原発や石炭推進の路線を継続するエネルギー基本計画になりかねない。この危機感を多くの人と共有し、持続可能なエネルギーへとシフトさせる必要がある。石炭ラッシュを止めるためにも、今年のエネルギー基本計画で石炭の方針を見直すことこそ重要だ。11月28日に開催された基本政策分科会では、複数の委員が2050年を見据えて30年のエネルギーミックスを策定することが必要とコメントしている。
また、経済産業省は、エネルギー基本計画の改訂の議論とは別に、パリ協定を踏まえ、2050年までに80%削減の日本の長期目標に対して、「幅広い意見を集約し、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行う」ことを目的に「エネルギー情勢懇談会」を設置している。
委員構成は8名で企業関係者や大学教授などからなり、第1回目は昨今のエネルギー情勢に対しての意見がそれぞれから表明された。長期的に石炭からの脱却や再エネや省エネへのシフトしかない、脱原発が理想だとの意見がでている。経産省事務局は、エネルギー基本計画改正とは切り離した議論ですすめられるとしながらも、必要があれば反映するとしている。
<http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/001/>
両方の会合では、基本的にこれまでの基本計画の実施を求める声や、原発の再稼働を訴える声、新増設の必要性を主張する声なども強く聞かれる。日本国内のエネルギー政策をめぐる議論は混沌としているが、いち早く脱石炭に舵をきり、日本の真の持続的な経済発展につなげていくことが必要だ。今後、年明けに向けて議論はとりまとめの方向に向かう。COP23では日本の石炭推進が強烈に批判の的になったが、エネルギー基本計画の改正に注目したい。