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E3G報告書「石炭スコアカード2018年」発表: ドイツ、石炭から決別の時

2018.09.25

英国のシンクタンクE3Gによる、先進7か国(G7)の石炭に関する政策を評価するスコアカード2018年版が、2018年9月21日に発表されました。今回の発表は、2015年10月の初版から毎年改訂を重ねた第4版です。

今回は、ドイツの失速が注目される結果となっていました。

再生可能エネルギーへのシフトを率先的に進めてきたドイツですが、石炭対策では失速し、石炭産業の復活を狙うトランプ政権下でも石炭火力発電所の削減が進むアメリカよりも下位、2017年から変わらないG7中6位に留まる結果となっています。ヨーロッパで最大規模の石炭火力発電を行っているドイツにとって、国内の石炭フェーズアウトは重大な課題です。ドイツの政策が、中央および東ヨーロッパの近隣国の石炭対策の影響を受け、ヨーロッパ全体の二酸化炭素排出量削減につながる可能性はあります。国際的には、ドイツの脱石炭政策が進めば、高度に工業化された経済が脱石炭を成し遂げるよい事例となり得るでしょう。

一方、昨年の2位から1位(フランスと同位)に上昇したカナダは、第23回 気候変動枠組み条約会議(COP23)で英国と共同で立ち上げた、石炭火力発電を早期に全廃し再生可能エネルギーへの移行を促進する国際的なイニシアチブ「Powering Past Coal Alliance 」を牽引しています。2030年までにOECD加盟国が石炭から撤退していることが不可欠とするこのイニシアチブには、気候候変動対策に前向きなアメリカの州政府や地域などが参加を表明しており、国際的な石炭フェーズアウトの議論の後押しとなっています。

また、イタリアは2025年までに石炭火力発電所から撤退することを表明し、昨年5位から今年は4位に浮上しました。G7中の4ヶ国が国内石炭のフェーズアウトを宣言しており、法あるいは規制によって脱石炭を実現させる方法を検討しています。

G7各国の石炭スコアランキングを以下に示します。

2018年の評価から、「国際的な影響」に「外構主導」の項目が追加されています。
G7諸国中、唯一ランクが下がった(昨年4位からの5位)のはアメリカです。とはいうものの、アメリカ国内ではカルフォルニア州を筆頭に、石炭からの撤退に向けた個別の取り組みが継続しています。アメリカ電力部門における脱石炭のエネルギーシフト(既設の石炭火力発電所の運転を中止し、計画中の新規の発電所計画を止める)も着々と進行しています。

最下位から変わらなかった日本は、国際的な影響の民間行動の項目で若干の改善が見られたものの、あいかわらずG7諸国の中で唯一、国内外で新規石炭火力発電所を建設し続けています。それでも、日本の銀行や保険会社、事業者の中には気候変動対策に前向きな方針転換を示すところも出始めました。企業の中にも、石炭から再エネへの転換の必要性を認識し始めたところもあります。しかし、日本政府の政策を変更するには至っていません。2019年、G20サミット(大阪サミット)の議長国となっている日本は、気候変動問題にどう対応していくのか問われることとなるでしょう。これを機に、日本が新規石炭火力発電所の建設を禁止する動きに賛同し、気候変動対策におけるリーダーシップを取リ戻すことができるか、世界から注目されます。

G7各国の石炭火力発電の動向を下図に示します。

計画中止:新規計画の石炭火力発電所のうち新たに6.5ギガワット(GW)が中止となり、2010年からの累積では71GW *に達しました。日本はG7諸国で唯一、いまだに新規石炭火力発電所に投資している国で、3.5GWの運転が開始となった一方、現時点までに7GWの新規計画が遅延・中止となっています。

廃止されたもの:G7全体では、2010年以降、発電容量にして131GWの石炭火力発電所が閉鎖されました。日本以外のG7各国の電力部門の構造的な動きとしては、石炭火力発電所の廃止は優先されています。
閉鎖が発表されたもの:政策的な減らすものも含め、既存の発電所の86GWの閉鎖が計画されています。

*2010年以降に計画が中止となったものの合計を見直し、2010年以前に中止となっていた発電所については2010-2018年の累計から削除されました。そのため、2017年時点での計画中止計74GWから今回の71GWに調整されていますが、各国の動向としては変わりません。

G7諸国は、引き続き石炭火力発電からの撤退を加速していくとして、以下を含む対策を進めていくことを明らかにしています。

  • 欧州投資銀行(EIB)および欧州復興開発銀行(EBRD)は、石炭への方針を見直し、規制を強化する。Powering Past Coal Allianceの加盟者全体では、EIBの68%、EBRDの45%の株を所有している。
  • 2019年、フランス政府はG7の主催国となる機会を生かし、石炭火力発電から再エネへのシフトを後押しする政府支援のもと、民間部門が石炭への資金提供を制限するのを後押しする。

 

参考リンク

2018年レポート:G7 Coal Scorecard – Fourth Edition, Decision Time for Coal in Germany(PDF)
2017年レポート:G7 Coal Scorecard 2017 – Third Edition, Rhetoric Vs. Reality in the USA(PDF)
2016年レポート:UK and US coal shifts shame Japan – New E3G analyses(PDF)