E3G報告書「石炭スコアカード2016年」発表: 世界が脱炭素政策を進める中、ますます孤立する日本


E3G報告書「石炭スコアカード2016年」発表:
世界が脱炭素政策を進める中、ますます孤立する日本

G7伊勢志摩サミット(2016年5月26-27日開催))の直前の5月20日、英国のシンクタンクE3Gが、先進7か国(G7)の石炭に関する政策を評価するスコアカードの報告書の更新版を発表しました。前回、2015年10月にボンで開催された気候変動枠組気候変動枠組条約会議の特別作業部会に合わせて発表されたスコアカードから約6か月、国際的枠組み「パリ協定」ができたCOP21を挟み、他のG7各国および世界で石炭火力発電からの撤退の動きが加速する中、ますます孤立を深める日本の状況が報告書から明らかになっています。

Coal Scorecard Final edited

今回の更新版は、前回同様、市場動向、各国の国内石炭利用政策、および国際的な影響についての分析を行っており、2010から2016年の間の変化を見ています。評価のポイントは (1)新規の石炭火力発電所のリスク、(2)新設計画や既存設備の閉鎖、(3)国際的な影響(途上国など国外の石炭火力への資金援助)です。

その結果、日本は昨年10月から変わらずG7中の最下位を維持し、「勝算のない賭け」に出ていると指摘されています。

Coal Scorecard Final edited

報告書のポイントは以下の通り。

  • 過去6か月の間に、さらに4GWの石炭火力発電設備の計画が中止となった。G7諸国の中で唯一日本だけが積極的な新規石炭火力発電所の建設を続けている。
  • 英国では政府が2025年までに石炭火力発電の段階的な削減を完了させると表明しスコアを上昇させた。
  • 世界では、既に現在までに閉鎖された発電設備は計165GWとなっており、今後は、既存の41GW*の発電設備が閉鎖される予定である。

また、E3Gはスコアカードと同時に、別の報告書『勝算のない賭け』を発表しています。この報告書でも、中国や米国が低炭素に向けた開発を進めているのとは対照的に、日本が従来の石炭ビジネスに固執していることが明らかにされています。パリ協定で全ての国が温暖化対策を加速させる必要性に迫られている中、日本の石炭政策は世界からますます孤立するようになっています。

*Scorecard Summaryでは、今後数年間で閉鎖される予定の発電所設備容量は40GWと示されていたが、その後1GWが閉鎖予定リストに追加され、プレスリリースの時点で閉鎖予定の設備容量は41GWとなっている。

報告書:

『G7石炭スコアカード更新版 石炭の段階的な削減と石炭火力発電所の閉鎖を目指して』スコアカード要約(PDF

『勝算のない賭け 中国や米国が低炭素に向かう中、従来のビジネスに固執する日本』要約(PDF

 参考リンク:

E3G: UK and US coal shifts shame Japan – New E3G analyses
*このページの右側の関連文書リスト(Related Document)にJapaneseと書かれているものは日本語でご覧いただけます。
E3G: Japan’s bad bet on a high carbon future

ダウンロード

「E3G報告書「石炭スコアカード2016年」発表:世界が脱炭素政策を進める中、ますます孤立する日本」(PDF)

関連報道:

DESMOGUK (2016/5/19): UK, US Lead G7 Nations in Coal Phase-Out While Japan Does The Opposite
Bloomberg (2016/5/20): Japan Efforts to Phase Out Coal Weakest Among G7, Group Says
Climate Home (2016/5/22): G7 host Japan mocks UN climate deal with coal binge, say greens
Japan Times (2016/5/17): Japan’s plan for emissions cuts under scrutiny after Paris accord

毎日新聞(2016/5/22東京朝刊)G7エネルギー政策 脱石炭、日本ワースト