レポート「石炭ギャップ」:既存石炭火力だけでも「2℃目標」とギャップ ~ 新規建設をとめれば35億トン削減に


国際的な研究者グループClimate Action TrackerがCOP21期間中に発表した「石炭ギャップ」というレポートがあります。

「パリ協定」では、地球の気温上昇を1.5℃/2℃未満にするという長期目標と脱炭素化に向けてすべての国が取り組むことが決まりました。しかし、このレポートで示されたのは、石炭火力発電所からの排出で既存分だけでも「2℃目標」相当分をはるかに超えてしまい、新規建設を含めると更にギャップが拡大するので、それを埋めなければならないということです。気温上昇2℃未満のために世界全体で2030年に石炭火力発電所から排出できる量は2Gt-CO2(20億トン)とされていますが、既存の発電所だけでも2030年に5.5Gt-CO2(55億トン)の排出をしてしまう上、新規に計画されている石炭火力発電所が全て動けば、排出は12Gt-CO2(120億トン)にも膨れ上がってしまうと報告されています。また、各国で石炭火力発電所が増え、稼働すれば、各国の約束草案で掲げている排出削減目標の達成は危うくなると警鐘をならしています。一方、まだ建設が始まっていない計画段階のプロジェクトを直ちに中止すれば、3.5Gt-CO2(35億トン)の排出を抑制することができるということです。

新設計画中止の影響が大きいとされる9カ国には途上国と並んで日本の名前もあがっています。石炭火力への対応は緊急に行われる必要があるということが改めてわかります。また、まだ計画段階の案件は、今こそ「建設中止」の懸命な判断を下せるときなのです。

参照:Climate Action Tracker Update, 1 December 2015. レポート『石炭ギャップ』