『活況と不況 2016 -世界の石炭火力発電所の計画と追跡-』
(Boom and Bust 2016: Tracking The Global Coal Plant Pipeline)
日本語訳の発表のお知らせ
世界の石炭火力発電所の実態を紹介した報告書『活況と不況 2016 -世界の石炭火力発電所の計画と追跡-』の日本語訳(要約・第一部のみ)が完成しました。
本報告書は、世界の環境問題に取り組んでいる団体、シエラクラブ、コール・スワーム、グリーンピースが、「グローバル石炭発電所トラッカー*」の2016年1月の調査結果を基に分析結果をまとめたものです。
報告書では、世界の4大市場において石炭火力発電所の利用が減少しているにもかかわらず、産業界がいまだに石炭火力発電所の過剰な建設にまい進し、巨額の資金を投入している状況を明らかにしています。主なポイントは以下の通り。
- 2015年、中国消費の減少を受け、世界全体の発電用途の石炭消費量は減少。
- 石炭火力による発電量が減少したにもかかわらず、石炭火力発電設備の新設が続く。新規建設の90%が中国とインドを中心とするアジアに集中。
- 石炭火力発電所の利用低迷に反して建設が続くことで、発電所の稼働率が低下。
- 中国では石炭火力発電設備の過剰が続き、公式の許認可手続きを経ずに建設される石炭家禄発電所が多いことが問題に。
- インドでは2006年以来増加し続けていた年間設備導入量が初めて減少。
- 欧米では石炭火力発電所の閉鎖が進むが、依然として世界平均と比較すれば多くの二酸化炭素を排出している。
- 既存の石炭火力発電所の二酸化炭素排出だけでも、地球の気温上昇を2℃に抑えるシナリオを凌駕しているため、耐用年数を待たずに早期に閉鎖する必要がある。
- 石炭による大気汚染が原因の早期死亡者は約80万人、今後さらに石炭科料発電所の増設が進めば13万人増加するとの推定も。
- 電力業界が石炭火力発電所につぎ込んでいる資金は9,810億米ドル。この額があれば、世界で電力にアクセスできていない12億人の人々に電気を供給するための費用を十分に賄うとともに、太陽光発電・風力発電の導入率を39%増加させることも可能。
- 長期的に見れば、新設の高効率発電所であっても新たに建設することは2040年までの脱炭素化目標とは相いれない。
報告書では、これからは石炭ではなく太陽光発電や風力発電などのクリーンで再生可能なエネルギーに移行する時代だと説得的に説明しています。
*グローバル石炭発電所トラッカー
2010年1月1日以降に計画された基地のすべての石炭火力発電所を特定し、マッピングし、解説を付けて分類したオンライン・データベース。
報告書(PDF)
日本語訳(抜粋)はこちら
この日本語訳(抜粋版)は、要旨と「第一部 世界の現状」を抜粋して翻訳したものです。
英語版は以下に公開されています。各地域の詳細な情報はこちらをご覧ください。
執筆者
Nicole Ghio(シエラクラブ 国際気候プログラム 上級活動主任)
Christine Shearer(コール・スワーム 上級研究員)
Aiqun Yu(コール・スワーム 研究員/フリージャーナリスト)
Ted Nace(コール・スワーム ディレクター)
Lauri Myllyvirta (グリーンピース 石炭・大気汚染部門 上級国際キャンペーナー)
日本語訳は気候ネットワークが担当しました。