【ニュース】第7次エネ基、温対計画、GX2040ビジョンが閣議決定


2月18日、第7次エネルギー基本計画(エネ基)、地球温暖化対策計画、GX2040ビジョンが閣議決定しました。

新たなエネルギー基本計画では、2040年度に再生可能エネルギー(4~5割)と原子力(2割)を全電源の最大7割とし、最大限活用する方針を明記していますが、火力も3~4割程度残しています。

第7次エネルギー基本計画

再生可能エネルギー
再エネの割合を4~5割程度というのは2030年の間違いではないのか?と勘違いする人もいるでしょう。しかし。これが政府の決めた2040年の見通しなのです。あまりにも低すぎます。COP28で採択された「2030年までに再エネ発電容量を世界全体で3倍にする」という目標は他人事でしょうか?日本が自ら率先して再エネを導入する意思が全く感じられません。

原子力
東京電力福島第一原発の事故以降、エネルギー基本計画に明示されてきた「可能なかぎり依存度を低減する」という文言が削除されました。さらに、原発の建て替えの条件が緩和されただけでなく、次世代型原子炉の開発を進めるなど、原発回帰を鮮明に打ち出す内容となっています。しかし、地震大国日本で原発の安全を完全に確保することは困難です。2040年度に電力のうち2割程度を原発で賄うとの計画は非現実的です。原発が動かず、結局火力を動かすことになればCO2は削減できません。

石炭
第7次エネ基に「脱石炭」は明示されませんでした。第6次エネ基で示した「非効率石炭火力のフェードアウト」が進んでいないことを認めつつ、非効率な石炭火力以外の廃止には言及しないまま利用を継続し、混焼や燃料転換を含む技術開発を進めるとの方針を固めました。石炭火力に関するトーンを弱め、国際圧力を避けようという狙いも透けて見えます。しかし、実態はこれまでと変わらず石炭を2040年も使い続けるというものです。

LNG
火力が電力供給および再エネ等による出力変動等を補う調整力として重要な役割を担っているとして、トランジション手段としてのLNG火力を増やしていく方針を示しました。

政府は、2040年度には電力需要が1.1兆キロワット時に増えると想定しています。脱炭素を実現しながら需要を賄うためには、「特定の電源や燃料源に過度に依存しない電源構成を目指す」と主張し、3~4割程度の火力を維持する方針です。燃料別の割合が示されないことで、発電所の廃止および排出削減に向けた道筋が見えにくくなっています。混焼による石炭火力の温存に加え、休止させて発電量を減らすといった見かけ上の削減策が取られることが懸念されます。

出典:「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」をもとに気候ネットワーク作成

地球温暖化対策計画

地球温暖化対策計画では、国連に提出する国別削減目標(NDC)となる2035年の目標、2013年比60%削減(2019年比54%程度の削減)が示されました。2035年までの削減目標を示すNDCは本来、2月10日までに国連に提出することが求められていましたが、日本政府はパブリックコメント(意見公募)の結果を精査することなどを理由に、期限内の提出を見送っていました。しかし、パブコメ*だけでなく、次期目標について議論していた審議会や脱炭素を目指す企業からも政府の目標が低すぎるとの意見が出されていたにもかかわらず、結局はパブコメの意見を考慮することも、再審議することもなく、政府は閣議決定された原案通りの削減目標を早速国連に提出するとしています。

*第7次エネルギー基本計画(エネ基)、地球温暖化対策計画、GX2040ビジョンに対し、それぞれ41,421件、3,211 件、516 件の意見が提出されていました。エネ基へのパブコメは過去最高です。パブコメの結果が発表されたのは閣議決定の前日(2月17日)でした。同日のロイターは、地球温暖化対策計画へのパブコメでの80%以上が政府案の60%減よりも野心的な計画を支持していたと報じています。

※環境省:日本のNDC(国が決定する貢献)

GX2040ビジョン

GX2040ビジョンは、2040年の脱炭素や産業政策の方向性を示す国家戦略ですが、経団連や旧一般電気事業者など既得権益関係者によって案がまとめられました。その結果、電力事業者や化石燃料関連業界などの温室効果ガスの大量排出事業者に対して多額の資金が流れる制度が出来上がっています。

米トランプ大統領が地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名するなど化石燃料への回帰を進めていますが、世界全体で脱炭素に向けた取り組みが一層加速する中、日本の目標がどのように国際社会に評価されるのでしょうか。
政府の強硬姿勢に対し、NGOなどから閣議決定に対する意見やコメントが発出されています。

※パブコメの結果
エネルギー基本計画案
地球温暖化対策計画案
GX2040ビジョン案

パートナー団体からの声明・コメント

FoEジャパン>声明:第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画、GX2040ビジョンの閣議決定に抗議ー原発回帰・電力の大量消費構造維持の内容で、気候も未来も守れない
自然エネルギー財団>コメント:自然エネルギーで日本の未来を開くため行動を続けよう
第7次エネルギー基本計画閣議決定にあたって
350.orgジャパン>プレスリリース:日本の新たな気候・エネルギー政策と国別貢献(NDC)へのコメント
気候ネットワーク>声明:第7次エネ基、温対計画、GX2040ビジョン閣議決定にあたって 将来世代につけを回す歴史的禍根となる決定
グリーンピースジャパン>「第7次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」閣議決定に対するグリーンピース声明ーー低すぎる再エネ目標の引き上げと国による脱炭素の加速化を求める

Can-Japan>日本の新しい気候・エネルギー目標は、パリ協定の目標達成に必要とされる水準には遠く及ばない

その他の団体からの声明・コメント

原子力資料情報室>【声明】第7次エネルギー基本計画の閣議決定に抗議する

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