【ニュース】Jパワー橘湾火力発電所1号機の運転を停止


3月14日、電源開発株式会社(以下Jパワー)は、橘湾火力発電所1号機(徳島県阿南市)の高温再熱蒸気管からの蒸気漏れに伴い、同発電所が2月15日から運転を停止していることを発表しました。Jパワーは点検の結果、高温再熱蒸気管の一部にき裂が確認されたとしており、その原因については、現在調査中としています。今後Jパワーは復旧に向けて、き裂が確認された配管を取り替えることとしており、運転再開の見込みは2025年2月末頃となっています。

橘湾火力発電所には、今回運転停止が発表された1号機(2000年7月運転開始)と2号機(同年12月運転開始)があり、両機(共に最大出力105万kW)で合計905万トンのCO2を排出しています(2021年度実績)。ここで発電された電気は四国エリア内だけでなく、近隣の関西・中国・九州エリアにも送られていますが、それらのエリアのうち九州、中国、四国エリアでは近年再エネの発電量増加に伴い再エネの出力制御が実施されることが増えています。

第 49 回系統 WG(2023 年 12 月 6 日)資料より気候ネットワーク作成
※出力制御率[%]=変動再エネ出力制御量[kWh]÷(変動再エネ出力制御量[kWh]+変動再エネ発電量[kWh])×100

最近では昼間の時間帯において太陽光と風力発電のみでほぼ100%の電力需要を満たす時間帯があったことも四国電力送配電が公開している四国エリアの電力需給実績値から明らかになっています。

四国エリアの過去の電力需給に関するデータ(四国電力送配電)より気候ネットワーク作成

再エネの出力制御は国が定めた「優先給電ルール」に伴い行われることとなっていますが、その中では再エネの出力制御が行われる際の既設の石炭火力の出力制御は50%とされています。今後四国エリアで再エネのみで電力需要を満たす時間帯がさらに増えれば、橘湾火力発電所で作られた電気を他のエリアに供給する必要性が増すこととなりますので、その稼働は四国エリアだけではなく給電する近隣エリアの再エネの出力制御率をより悪化させることにもつながりかねないと考えられます。(再エネの出力制御について詳しくは気候ネットワーク通信154号P.8-9を参照。)

そもそも地球温暖化を防ぐための「1.5℃目標」を実現するには、温室効果ガスの排出を2050年までにゼロにする必要があり、その実現のためには再エネを増やし、石炭火力発電所のような大規模な排出源はフェーズアウト(段階的廃止)を加速していく必要があります。Jパワーは今回の故障を奇禍として、橘湾火力発電所1号機の休廃止を検討すべきです。さらに2号機も含めた保有する全ての石炭火力発電所のフェーズアウト計画を早急に策定すべきです。

石炭火力のフェーズアウトを進めるには、発電所廃止後に立地自治体が脱炭素社会に向けた地域づくりを進められるように支援することも必要です。政府は、国内すべての既存石炭火力発電所をフェーズアウトする目標年次を定めたうえで、その具体的な道筋を描き、着実に石炭火力の廃止を進めると共に、公正な移行に向けた地域支援を始めるべきです。

関連リンク

J-POWERニュースリリース:橘湾火力発電所1号機の運転停止について(2024年3月14日)