【レポート】国連がNDC分析結果を発表—1.5℃目標達成には依然不十分


国連は11月14日、温室効果ガス排出削減に向けて各国が提出した気候変動対策の計画は、パリ協定の1.5℃目標を達成するには不十分だとする報告書を発表しました。

パリ協定下における国別GHG削減目標の評価分析

国連は、今年9月25日までに新たに提出されたものと更新されたものを含む195か国の温室効果ガス(GHG)削減目標(NDC)を分析した統合報告書「Nationally determined contributions under the Paris Agreement」を発表しました。報告書は、現在の各国のGHG削減目標が全て達成された場合でも2030年の世界のGHG排出量は、約51.6ギガトンとなり、2010年比で8.8%増加すると示しています。

2019年比では、2030年までに世界のGHG排出量は2%下がり、減少に転じると示されました。しかし、IPCCの最新の科学的知見では、地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑え、気候変動によるより深刻な影響を避けるためには、2030年までにGHG排出量を2019年比で43%削減する必要があります。

報告書は、世界のGHG排出量を2030年より早期に減少に転じさせるためには各国のNDCが実行に移される必要があるが、それは主に強化された財源へのアクセス、技術移転と技術協力、能力構築支援に依存していると指摘しています。また、市場メカニズムの有効性についても言及しています。

報告書は、気候変動による深刻な影響を防ぐためには、世界の排出経路をさらに減少に転じさせるための、より多くの行動が今こそ必要だと示しています。

国連気候変動枠組条約のサイモン・スティル事務局長は本報告書の発表を受け、「本報告書は、各国が気候危機を防ぐために非常に小さな歩みしか進めていないことを明らかにしています。ドバイでのCOP28に向け、より大胆な歩みを進める必要があります。COP28は重要なターニングポイントであり、各国政府はより強力な気候対策に合意するだけでなく、どのようにそれを実行するのかを示さなければならなりません。」とコメントしました。

長期的な低排出開発戦略に関する報告書

また、同日、長期的な低排出開発戦略に関する第2回国連気候変動報告書「Long-term low-emission development strategies」も発表されました。この報告書は、9月25日時点で事務局に提出された、パリ協定の75締約国のうち、入手可能な最新の68の長期低排出開発戦略の情報を統合したものです。こちらの報告書では、すべての長期戦略が期限内に実行された場合、対象国のGHG排出量は、2050年に2019年比で約63%減少する可能性があると示しています。しかし、そうしたネットゼロ目標は依然として不確実であり、すぐに実行すべき重要な行動が先送りにされているとも指摘されています。

関連リンク

国連によるプレスリリース:New Analysis of National Climate Plans: Insufficient Progress Made, COP28 Must Set Stage for Immediate Action(リンク
報告書:Nationally determined contributions under the Paris Agreement(リンク
報告書:Long-term low-emission development strategies(リンク

作成・発行:国際連合枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)
発行:2023年11月14日