再生可能エネルギー(以下、再エネ)による発電の普及拡大を目指して、2012年7月から、再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)が開始されました。再エネの一つであるバイオマス燃料による発電もその対象となっています。
ところが、バイオマス燃料を石炭火力発電所で石炭と混焼(燃料として一緒に燃やす)した場合、その石炭発電所はFITの対象となり、発電された電力のうち、バイオマス比率部分についてはFITの対象となり、固定価格で電力会社が買い取るようになりました。買取(調達)価格は表1のとおりです。
表1.FITによるバイオマス発電に関する調達価格、調達期間
バイオマスの種類 |
固形燃料燃焼 (未利用木材) |
固形燃料燃焼 (一般木材) |
固形燃料燃焼 (一般廃棄物) |
固形燃料燃焼 (下水汚泥) |
固形燃料燃焼 (リサイクル木材) |
1kWh当たり調達価格(税抜き) |
32円 |
24円 |
17円 |
13円 |
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調達期間 |
20年 |
石炭バイオマス混焼ではCO2排出が増えてしまう
石炭火力発電所でバイオマス燃料を混焼する場合、一般的にその混焼率(石炭にバイオマス燃料を混ぜる比率)は、わずか1~3%程度にすぎません(重量比。木質バイオマスの場合)。残りの97%程度は石炭を燃料としています。
一般的な石炭火力発電は大量のCO2を排出します(943g-CO2/kWh)(1)。バイオマス燃料によりこれを3%抑制できるとしても、効率の高いコンバインドサイクルLNG火力発電(474g-CO2/kWh)と比べ2倍程度のCO2を排出し、温暖化の最大の要因の一つであることにまったく変わりはありません。にもかかわらず、表1のようにバイオマスの場合、20年間の調達期間が保障されているので、石炭火力発電の長期運転のインセンティブを高めてしまう恐れがあります。
ちなみに、政府の報告(2)によると、表2のように石炭混焼バイオマス発電の発電コストは 通常の石炭火力発電コストとほぼ同じであると試算されています。わざわざFITの対象とする必要は見当たりません。
表2.石炭火力とバイオマス混焼の発電コスト比較
発電種類 |
発電コスト |
通常の石炭火力 |
9.5~9.7円/kWh |
石炭混焼バイオマス発電 |
9.5~9.8円/kWh |
木質専焼 |
17.4~32.2円/kWh |
資源エネルギー庁のFIT設備認定データ(3)によれば、すでに35万kWの石炭混焼バイオマス発電設備が1件認定されていることが明らかになっています。
しかし、再エネを促進するはずの制度であるFITが、石炭火力発電所を長期にわたり温存することに利用されることは防がなければなりません。石炭混焼バイオマス発電は、FITの対象から除外するべきです。
(1) 電気事業連合会「各種電源別のライフサイクルCO2排出量」より。
(2) 内閣府国家戦略室「コスト等検証委員会最終報告書」2011年
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive02_hokoku.html
(3) http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/dl/setsubi/201302setsubi.pdf
環境エネルギー政策研究所 船津寛和