前回のトピックスで、2013年6月にオバマ大統領が、新規の石炭火力発電の海外支援をやめるという方針を発表したことを紹介しましたが、今度は、世界銀行が同じ方向性の方針を発表したことをご紹介します。
7月6日、世界銀行が「すべての人の持続可能な未来へ向けて」 と題する、これからのエネルギー部門の支援についての方針を発表しました。
この方針で最も強調されていることは、貧困への対応です。世界には電気がない家族、学校、病院などがたくさんあること、そして全ての人へ出来るだけ早く電気を提供することが最重要課題だとしています。
その上で、世界銀行は、発展のためのエネルギーと気候変動の影響とのバランスを図るために、大量のCO2排出をもたらすことになる新規の石炭火力発電プロジェクトについては、“稀な状況”を除いて今後支援しないという方針を決定しました。例外は、基本的なエネルギーのニーズが満たされるために他に妥当な代替案がない国の場合とされています。この例外については、2010年に発表した「開発と気候変動戦略の枠組みにおける石炭開発の基準」を基に決めるとしました。
そして、これからの方針として、引き続き再生可能エネルギーへの支援をしていくとしています。
バングラデシュでは太陽光発電プロジェクトを支援
ただし、大規模水力発電や揚水発電などの支援を続けていくこと、新規の石炭火力発電への支援を減らす一方で、二酸化炭素回収貯留(CCS)など石炭火力発電の技術開発支援を行うなど、方針の中には、懸念される方針も残されています。
またこの方針では、天然ガスは石炭に比べ温室効果ガスの排出が少ないため、持続可能な電源へ移行する間の暫定的な電源として利用していくことが位置づけています。
世界銀行のこの新たな方針には、最善策といえない内容も含まれていますが、石炭発電プロジェクトの支援を基本的に停止するという判断は、気候変動問題に向き合った、大きな方針転換です。
アメリカのシンクタンク「世界資源研究所(WRI)」の研究レポート「世界石炭リスクアセスメント」(下表) には、過去14年間で石炭火力発電プロジェクトへの支援を行ってきた公的金融機関のランキングがあります。これによれば、世界銀行グループは2位。そして、1位は日本の国際協力銀行です。
オバマ大統領による米国の方針、続く世界銀行の方針。日本の金融機関はそれに続くでしょうか?
世界銀行によるニュース(英語)
http://www.worldbank.org/en/news/feature/2013/07/16/world-bank-group-direction-for-energy-sector
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写真の出典
画像1: 世界銀行