2013年7月18日、アメリカ合衆国の合衆国輸出入銀行理事会は、ベトナムの第2タイビン石炭火力発電所の建設プロジェクトへの資金調達を中止することを決定しました。
計画されている第2タイビン石炭火力発電所は、合計120万kW発電するもので、経済成長するベトナムにとっては重要な電力とされていますが、石炭というCO2排出の多い燃料を使うという大きな懸念がある計画です。
今回の合衆国輸出入銀行の決断は、6月に、オバマ大統領が「気候行動計画」において、米政府が今後石炭発電のプロジェクトを支援しないと発表したことを受け、これを最初に行動に移したケースとなります。
今回の理事会に先立って、米国のNGOである、地球の友、グリーンピースUSA、パシフィック・エンバイロメント、国際環境法センター、生物多様性センターら5つの団体がオバマ大統領に対して第2タイビン石炭火力発電所が気候行動計画や輸出入銀行の環境方針に反すると訴えた手紙を提出していました。
合衆国輸出入銀行がプロジェクトへの資金提供の合否を決める際には議会を通さず、オバマ大統領をトップとした行政が判断することになっています。これまでオバマ大統領はアメリカの輸出増加を優先し、輸出入銀行を通じて温室効果ガスを排出する事業にも積極的に支援してきました。ですから、今回の輸出入銀行の決断は、環境を優先した政策への方針転換の重要な一歩だと言えます。
オバマ大統領そしてアメリカ政府の脱石炭方針の決意が表れた今回の決断にはシエラクラブなどの環境団体も歓迎しており、今後石炭プロジェクトへの資金援助が大幅に減ることに期待を寄せています。
日本もこの流れに乗って石炭への援助を中止して欲しいと願うところですが、現実には今回輸出入銀行が手を引いた第2タイビン石炭火力発電所の建設プロジェクトへは、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討し、日本の銀行などが融資をしています。アメリカやヨーロッパで脱石炭の方針が続々と決定されている中で、日本だけが孤立してこのまま石炭発電プロジェクトを積極的に援助し続けていて、果たしていいのでしょうか。
ビジネスウィークの記事(7月18日)
ロイターの記事(7月18日)
http://www.reuters.com/article/2013/07/18/us-usa-vietnam-coal-idUSBRE96H15X20130718
ブルームバーグの記事(7月19日)
http://www.bloomberg.com/news/2013-07-18/ex-im-bank-halts-funding-review-for-vietnam-coal-plant.html
ザ・ヒルの記事(7月18日)
シエラクラブのリリース(7月18日)