出光興産は、貴重な生態系の残るボガブライ(オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)の森林を伐採し、石炭採掘を拡大しようとしています(2013/5/31 出光興産、オーストラリアでの石炭採掘で貴重な森林を破壊)。 これに対して現地の住民や農民、環境活動家などが抗議活動を続けてきていましたが、その声は強まるばかりです。
7月、現地の環境団体のネットワークであるNorthern Inland Council for the Environment(NICE)は、出光興産の同事業と、隣接した地域におけるWhitehaven社の石炭採掘に対して政府が出した事業実施許可の取り消しを求め、裁判を起こしました。9月にヒアリングが行われ、年内か遅くとも2014年2月には結果が出ると予想されています。
NICEの主張の一つは、事業がもたらす壊滅的な環境破壊についてです。 絶滅危惧種を含む396種の動植物の生息域が脅かされるばかりではなく、地下水を枯渇させ、年間18,000トンもの灰を出すと見込まれ、近隣住民への健康被害が起こる可能性があります。 許可が下りたプロセスにも強い懸念が示されています。今回の許可は拙速に判断が下され、しかも事業者が提出した環境報告書には虚偽の情報が書かれていたり、誤った認識を与える書き方がされていると指摘しています。例えば前述の地下水に関しては、出光興産は「石炭採掘による問題はない」と記しており、現地住民らの認識とは正反対のものです。
また、問題はこれだけではありません。先住民族であるゴメロイの人たちは、ボガブライを含むニューサウスウェールズ州での石炭開発事業によって自分達の土地や権利が侵害されているとして、石炭開発をやめるように求める声明を発表しています。11月にシドニーで抗議活動が開かれた際には、約100人もの先住民とその支持者が集まりました。
画像提供:Alex Bloom
伐採予定地近くには抗議活動を行うキャンプ地が作られ、12月15日は設立から500日目にあたります。14日~16日にかけては抗議集会が開かれ、たくさんの人々が「IDEMITSU : Don’t Destroy Koala Habitat ! (出光さん、コアラの森を壊さないで!)」と訴えました。日本では、森林破壊問題に取組むNGO、JATAN(熱帯林行動ネットワーク)がこの活動に賛同し、事業の中止を求めました。
また、もう一つ、抗議の対象となっているのがJBIC(国際協力銀行)です。同行はこの事業に関して出光興産に3億5千万米ドルもの資金を融資しています。同行の「環境社会配慮のためのガイドライン」では、プロジェクト実施にあたって環境配慮がなされること、先住民族への配慮がなされることが求められていますが、長期にわたって抗議活動が続き、環境への深刻なダメージが懸念されるこの事業は、ガイドラインを遵守していると言えるのでしょうか?
●関連リンク Lock the Gate Alliance 裁判までの経緯(英語)(2013/7/19) http://www.lockthegate.org.au/legal_challenge_lodged_against_dodgy_approval_of_maules_creek_coal_mine
Green Left Weekly 先住民族の遺産が鉱山開発によって危機にさらされる(英語)(2013/11/9) https://www.greenleft.org.au/node/55330
国際協力銀行 環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン http://www.jbic.go.jp/ja/efforts/environment
JATAN(熱帯林行動ネットワーク) プレスリリース 出光興産による豪州ボガブライ石炭鉱山拡張に反対する ―拡張開発が森林を含む自然生態系と地域社会にもたらす影響への懸念―
http://www.jatan.org/?p=2843