環境大臣が昨年環境アセスの配慮書段階で「是認できない」としていた5件のうちの1件である千葉袖ヶ浦火力発電所建設計画について、1月29日、計画事業者である千葉袖ヶ浦エナジーは方法書を経産大臣に届出しました。千葉袖ヶ浦エナジーは、出光興産・九州電力・東京ガスの3社が均等比率で出資し、昨年5月に設立された会社です。
袖ヶ浦火力発電所計画 進行中
袖ヶ浦火力発電所計画は、全国47の計画の中でも200万kWと最大級の設備容量で、運転開始時期を2025年からとしています。パリ協定も合意され、その後イギリスは既存発電所も含めて石炭火力発電から撤退するというのがまさに2025年まで。そんなタイミングに、日本では新設石炭火力の運転を開始しようというのですから、時代錯誤も甚だしい計画ですが、事業者はそんなことはおかまいなしで着々と環境アセスの手続きを進めているのです。
2月11日に行われた方法書に関する事業者の住民説明会では、客席に50人程度の住民が参加しています。今までとは少し違う雰囲気に住民自身も驚きをもって見ていた様子が袖ケ浦市の市民団体がブログでも紹介されていました。住民からの質問は全部で24件もあり、そのうちの約半分は気候変動関連の質問で、関心の高さが伺えましした。
例えば、「今回の建設計画はパリ協定に反するのでは?」とか、「排出係数の業界目標0.37kg-CO2/kWhはどう達成するの?」とか、「石炭建設は国際社会に逆行し、将来石炭火力が閉鎖になる可能性があり、事業リスクが高いのでは?」などです。
ところが、残念なことに、事業者からはそれに対しての丁寧な回答はなく、全部ひとまとめにされて従来の主張をくりかえすだけのものでした。要するに、石炭は地政学的リスクが少なく、安定し、低廉なエネルギーであることから、国のエネルギー基本計画でもベースロード電源としているから、開発するには十分意味がある、とか、技術的には「BATの参考表」で示された商用プラントとしてすでに運転開始をしている最新鋭の発電技術だから問題はないし、国の目標・計画については、電力の小売業者たちがつくる新たな自主的枠組みでやっていくから良い、といった具合です。
しかし、この説明で市民が納得できるはずもありません。
2月8日に旧電力と新電力が「電気事業低炭素社会協議会」と新たな組織化を発表したものの、内容については進展があるものでもなく、排出係数0.37kg-CO2/kWhを達成する具体的な手段も方法も示されていないのです。事業者自身の責任は「目標を持っている小売業者に販売するから良い」と言われても、これまで自主行動計画の目標を守らなかった人たちの何を信用したらいいというのでしょうか。
そもそも、東京ガスは、天然ガスの環境性を売りにしていましたよね。
4月からの小売事業スタートに有意に参入するため、環境性能が天然ガスより劣ると分かっている石炭を使ってまで「安い」電力を作るために石炭火力発電所をつくるのでしょうか。
環境アセス方法書 意見募集中
方法書一般意見締切日は2016年3月15日(火)です。
千葉袖ヶ浦エネジー リンク
参考
気候ネットワークより提出した意見書(PDF)はこちらでご覧いただけます。
【意見書】(仮称)千葉袖ケ浦火力発電所1,2号機建設計画の環境影響評価方法書に対する意見(2016/2/26) リンク