またまた新規案件が始動…!しかも、なぜ中国電力が関東に? 千葉市の石炭火力発電所建設計画


千葉市の石炭火力発電所建設計画

2016年11月7日、千葉市の石炭火力発電所の建設計画につき、中国電力とJFEスチールが共同で検討を始めることで合意したと発表されました*1。この計画は、2014年4月に中国電力・JFEスチール・東京ガスの3社が千葉県千葉市に100万kW級の発電所の建設を検討していると報じられ、石炭発電所ウォッチでも取り上げていた案件ですが、昨年、3社で東京電力の入札に応札したものの落札できなかったまま動きを潜めていたものです。しかし、7日の報道によれば中国電力とJFEスチールの2社で建設を進める計画が始動したようです。パリ協定が出来、これだけ石炭火力への批判が国内外で高まっているのに、もかかわらず、です。

*1 JFEスチール報道資料「石炭火力発電所共同開発検討の合意について」(リンク
*2 『石炭発電所新設ウォッチ』に、「発電所名不明/中国電力・JFEスチール・東京ガス/千葉県千葉市」として登録していた計画

該当する案件の名称は「(仮称)蘇我火力発電所 建設計画」で概要は以下となっています。

事業名称 (仮称)蘇我火力発電所 建設計画
実施区域 千葉県千葉市中央区川崎町1 番地

(JFE スチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)構内)

計画策定者または事業者 中国電力株式会社、JFEスチール株式会社
規模 約107万kW
燃料 石炭+副生ガス
運転開始予定 平成36年(2024年)

中国電力とJFEスチールは、2016年度中に中国電力が主体となって特別目的会社(SPC)を設立した上で事業化の可能性について検証するとしながらも、SPC設立に先立って12月19日に建設計画の環境配慮書を提出しました。*3

超々臨界圧(USC)石炭火力発電所の建設予定地は千葉県千葉市中央区のJFE東日本製鉄所(千葉地区)構内ですが、実現すれば中国電力にとって初の首都圏での発電事業となります。しかも、中国電力までもが首都圏に?と驚くばかりです。

*3 JFEスチール報道資料「(仮称)蘇我火力発電所 建設計画 計画段階環境配慮書」の送付および縦覧について」(リンク

首都圏の電力市場は甘い蜜?

中国電力はこの(仮称)蘇我火力発電所で発電した電気を地元の千葉地区で使うほか、中国電力の子会社が首都圏で高圧電力を契約する企業に販売することを検討しています。2016年4月に電力小売り自由化がスタートして以降、中国電力のような他地域の事業者が首都圏の巨大市場における中長期的な電力確保を狙って参入してきているのです。

首都圏の電力需要が今後も増加するとの見通しのもとで発電所の計画が進められていますが、本当に首都圏への電源供給としてこれほどの規模の火力発電所の追加が必要なのか疑問です。

環境アセスメントに意見しよう

建設地がJFEスチール東日本製鉄所構内ということで、計画は着々と進んでしまう恐れがあります。仮に建設されれば、石炭燃焼により、硫黄酸化物、窒素酸化物、煤煙などの有害物質が発生するのは避けられません。また、日本近海の海水温の上昇が問題視されている昨今、この事業における温排水(3℃上昇域)が周辺海域および干潟に影響を及ぼさないのかも気になります。事業者は適正に処理する、影響は及ばないとしていますが、新たな発電所を建設する以上、環境負荷および住民の健康への影響がないということはありません。さらに、発電所や工場が林立する京葉工業地帯における累積的な環境への影響も不安材料です。製鉄所構内に建設されるからと言って、無関心ではいられません。

既に環境アセスメントが開始されており、配慮書の公表期間は 2016年12月20日(火)~2017年1月25日(水)となっています。千葉市、市原市の公共施設で縦覧可能となっています。本事業計画に対する意見や質問は2017年2月8日(水)まで提出可能です。特に千葉に在住の方は、環境配慮書を一読して意見を出していきましょう。

環境アセスメント 配慮書

中部電力:(仮称)蘇我火力発電所建設計画 計画段階配慮書(リンク
(このページから配慮書、要約書及びあらましが縦覧できますが、「あらまし」以外は縦覧期間のみしか閲覧できませんので、ご注意下さい。意見書の書式もここから入手可能です。)

配慮書の縦覧方法および意見書の提出方法(PDF

参考

市原市情報センターブログ:千葉県市原市に新たな火力発電所の建設計画(リンク